つくば宇宙フォーラム

第100

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初代銀河形成シミュレーション:初代星から低金属度星団形成までの統一的理解に向けて

矢島 秀伸 氏

筑波大学 宇宙理論研究室


要旨

近年の観測の発展により,赤方偏移7を超える銀河が続々と発見された。そして,ジェームスウェッブ宇宙望遠鏡やTMTなどの次世代観測装置により,赤方偏移10を超える初代銀河の検出が現在期待されている。初代銀河は,銀河進化史を理解する上で重要なだけでなく,宇宙再電離を引き起こした電離源や,また巨大ブラックホールを育む環境としても注目を集めている。しかしながら,理論的には初代銀河の形成・進化のメカニズムはほとんど分かっていない。我々は以下の三点に着目し,初代銀河の形成・進化について研究を行った。

  1. 初代星ミニハロー集積による初代銀河形成過程
  2. 初代銀河内における大質量ガス雲形成過程
  3. ガス雲内での星団形成

高精度な宇宙論的輻射流体シミュレーションにより,初代銀河形成過程は初代星の初期質量関数の影響を大きく受けること,紫外線フィードバックが重要であることが分かった。初代星の多重超新星爆発による重元素汚染により,赤方偏移12程度で星形成モードは種族IIIから種族IIへと遷移する。また,銀河合体シミュレーションにより,衝撃波後面では熱的不安定性により銀河円盤部で1万太陽質量程度の冷たいガス雲が形成されることが分かった。本講演では,これらのシミュレーション結果とともに,ガス雲から星団形成について議論し,また今後の展望についても述べる。

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