特集記事

ダークマターサブハローの衝突頻度と矮小銀河の誘発的形成

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概要 現在の標準的な銀河形成モデルであるcold dark matterによる階層的構造形成論によると、銀河には星質量の$100$倍以上のダークマターを含むことが知られている。 しかし、最近の観測では、理論的に予測される質量よりも非常に少ないダークマター質量を持つダークマター欠乏銀河の存在が報告されている。 この問題を解決するために本研究では、ガスを含んだダークマターサブハロー同士の正面衝突現象によって形成する銀河の物理過程を調査した。 大質量銀河のホストハローに付随するダークマターサブハロー...

【プレスリリース】「富岳」を用いた宇宙ニュートリノの数値シミュレーションに成功 〜2021年ゴードン・ベル賞ファイナリストに選出〜

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本研究では,ブラソフシミュレーションと呼ばれる全く新しい⼿法を世界で初めて採⽤し,スーパーコンピュータ「富岳」の全システムを⽤いて宇宙⼤規模構造におけるニュートリノの運動に関する⼤規模数値シミュレーションを実⾏することに成功しました。ブラソフシミュレーションは,従来の計算⼿法(N 体シミュレーション)に⽐べて,ノイズのない数値シミュレーションを実⾏することが可能ですが,計算量や必要なメモリ容量がかなり⼤きくなることが問題でした。本研究では,⾰新的な計算アルゴリズムと「富岳」に最適化したコーディン...

【プレスリリース】冬眠するブラックホール ~銀河衝突がもたらす大質量ブラックホールのエネルギー源の流失~

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宇宙には太陽の質量の10万倍を超える大質量ブラックホールがあまねく存在しますが,そのごく一部は落ち込む物質をエネルギー源にして明るく輝き激しく活動しているものの,ほとんどは銀河の中心でひっそりと佇んでいます。こうしたブラックホールの活動と休眠の間の状態変化をつかさどるメカニズムが未解明である中,東京大学情報基盤センターの三木洋平助教,筑波大学計算科学研究センターの森正夫准教授,尾道市立大学経済情報学部/国立天文台の川口俊宏准教授の研究グループは,Oakforest-PACS(オークフォレストパッ...

【プレスリリース】宇宙を飛び交うニュートリノの動きを明らかに ~世界初の6次元シミュレーションに成功~

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物質を構成する基本的な素粒子の一つであるニュートリノは我々の宇宙に大量に存在し,わずかながら質量を持つことが知られています。しかし,その質量は,地上の素粒子実験などでは測定が困難で,未解明の謎として残っています。一方,宇宙における天体や物質の分布(大規模構造)の詳細な観測からニュートリノの質量を測定できることが近年の宇宙進化の理論によって示され,大型観測プロジェクトが世界中で計画されています。 理論的には,精緻な数値シミュレーションにより宇宙の大規模構造を詳細に再現することが必要ですが,そのた...

Diffuse Photonを考慮した3次元輻射輸送計算on GPUs(Part 1)

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内容 星間空間,銀河形成や進化,宇宙の大規模構造などでの物理現象を正確に記述するには,星や星間媒質から 放射される光の影響を計算する輻射輸送方程式を厳密に解く必要がある。 星からの光は中性ガスに吸収され減衰していくだけであるが,紫外線以上のエネルギーを受け取った中性ガスは電離し, 電離ガスである確率で電子と再結合をして中性ガスに戻り,その際に再結合光子という電離光子を放射するので 新たな光源になり周囲に影響を及ぼすため無視することはできない。 我々の研究ではこの電離光子の影響を調べるた...

アンドロメダ銀河の奇妙な暗黒物質

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概要 筑波大学大学院生の桐原崇亘,研究員の三木洋平,准教授の森正夫らによる研究グループは,アンドロメダ銀河*1を取り巻く暗黒物質*2の分布が,標準理論で予言される分布から大幅に食い違っていることを解き明かしました。 我々から240万光年彼方に位置するアンドロメダ銀河では,今から約7億年前に起こった銀河の衝突の痕跡が発見されています。本研究グループは,この銀河衝突の様子を筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータを用いて忠実に再現することにより,アンドロメダ銀河を取り巻く暗黒物質の広が...

合体で巨大化するブラックホール: 高精度シミュレーションが解き明かす巨大ブラックホールの謎

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概要 様々な銀河の中心部に巨大なブラックホールが観測されているが,まだ その起源は明らかにされていない。標準銀河形成論では,多数の銀河の 合体によって,より大きな銀河が生まれると考えられている。元の銀河 がブラックホールを持っていれば,合体後の銀河の中に多数のブラック ホールが浮かんでいることになるが,これでは観測事実を説明できない。 我々は宇宙シミュレータFIRST(筑波大学)を用い,銀河内の多数のブラッ クホールについて,一般相対論の効果を入れた高精度重力計算を世界で 初めて実現した。1...

Global Radiation-Magnetohydrodynamic Simulations of Black Hole Accretion Flow and Outflow: Unified Model of Three States

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ブラックホールへのガス降着流の理解は, 1970年代に登場した標準円盤モデルと,それに引き続き提案されたスリム円盤モデル, ADAF(RIAF)モデルといった1次元モデルを中心に大きく発展してきた。これらのモデルでは,肝心のエネルギーおよび粘性の起源 を現象論的モデル(所謂αモデル)で扱っている。近年,それらが磁場起源であることがわかり, MHD計算で詳細な研究が行われ るようになった。しかしながら,より現時的な描像を得るためには,輻射冷却や輻射圧も考慮する必要がある。即ち,MHD計算に 輻射輸...