つくば宇宙フォーラム

第140

X線偏光観測による活動銀河核の構造

谷本 敦 氏

鹿児島大学


要旨
 活動銀河核(Active Galactic Nucleus; AGN)とは,超巨大質量ブラックホール(SuperMassive Black Hole; SMBH)への質量降着により,その重力エネルギーを放射エネルギーへ変換し,銀河中心が約$10^{9}$太陽光度で光り輝く現象です。AGNは電波からガンマ線を放射しており,これまで様々な波長で観測されてきました。特に近年では,サブミリ波干渉計Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)により,AGNのpcスケールの構造の直接撮像が可能になってきました。しかしながら,pcスケールよりも内側の構造がどのようになっているのかは未だに理解されていません。そこで本研究では,X線偏光観測を利用して,AGNのさらに内側の構造を調べました。何故なら,X線偏光観測の場合,観測される偏光度や偏光角は,AGNの周囲に存在する物質の密度や幾何構造に強く依存するためです。実際,2022年には,X線天文衛星Imaging X-ray Polarimetry Explorer (IXPE)により,最近傍のセイファート2型銀河であるCircinus galaxyからのX線偏光が世界で初めて検出されています。本講演では,基本的な内容(AGNの観測の歴史,分類,統一モデル等)から最新の研究内容(3次元輻射流体計算による輻射駆動噴水モデル,輻射駆動噴水モデルに基づくX線偏光計算)について紹介する予定です。 Image