つくば宇宙フォーラム

第137

シミュレーション・サーベイで探る,初代星形成の統一シナリオ

平野 信吾 氏

東京大学


要旨
初代星 (first stars or Population III stars) とは,初期宇宙における始原的ガス雲で誕生する第一世代の星であり,ガス雲が重元素を持つ後の世代の星々 (Population II/I stars) とは形成・進化が異なる考えられている。近年,James Webb Space Telescope (JWST) の登場により,赤方偏移10以上の最遠方銀河の観測研究が加速しており,初代星・初代銀河の理論モデル構築の重要性は増しつつある。本講演では,これまでに数値シミュレーションを用いて行われてきた初代星の理論研究について概観する。特に,初期宇宙進化において初代星を構成要素としてモデル化する際に重要となる,(1)いつ・どこで初代星が誕生するかを決める「ハロー質量」と,(2)初代星の一生と最後を決める「星質量」について,近年の研究動向をまとめつつ,我々のグループの研究成果を紹介する。 (1) 初代星形成が始まるために必要なハロー質量は,初期宇宙に存在するダークマターとバリオンの相対速度によって変化する。シミュレーション・サーベイよりハロー質量の相対速度依存性を明らかにし,質的に異なる初代星形成過程(星,星団,超大質量星)の出現率を求めた。 (2) 初期宇宙の微弱な始原的磁場が,星形成攻略段階(後期段階)において指数関数的に増幅することを発見した。強磁場は星周円盤の分裂を抑制し,中心星星へのガス降着を促進するため,星質量は増加する。 講演の最後には,初代星形成シナリオの現状と今後の課題をまとめ,今後の展望を述べる。 Image