第126回
2022年5月12日,国際共同研究プロジェクト Event Horizon Telescope (EHT) Collaborationにより,私たちの住む天の川銀河中心にある巨大ブラックホール Sgr A*のごく近傍 (数重力半径スケール)の撮影結果が,世界で初めて公開された。
EHTは,世界各国の望遠鏡を結ぶことで地球スケールの仮想望遠鏡を構成し,ブラックホールごく近傍の世界を撮影・解明する,国際共同研究プロジェクトである。
Sgr A*は,最も大きな視直径を持つ巨大ブラックホールであると同時に,周辺を軌道運動する星の観測によって,その質量,地球からの距離が正確に見積もられており,正確な時空測定が期待された。得られた画像は,2019年に報道された楕円銀河M87の中心巨大ブラックホールM87*のものと同様に,リング状の構造を示し,その直径は約50マイクロ秒角であることがわかった。
これは,一般相対論から理論的に予言されたブラックホールシャドウの特徴と一致し,ブラックホールの事象の地平面の存在を視覚的に示している。今回は,Sgr A*の成果について,詳しい解析方法,画像化までのプロセスについて紹介し,得られた結果,将来の展望を説明する。