つくば宇宙フォーラム

第123

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初代星の痕跡に迫る多角的研究

桐原 崇亘 氏

筑波大学計算科学研究センター


要旨

初代星はわれわれの宇宙で最初の輝く天体であり,重元素をはじめて生みだす天体でもあるため,宇宙史のなかで特に重要な役割を担っている。しかしながら,いまだ観測的にその直接的な痕跡は得られていない。現在,多波長で新世代の観測機器の運用・観測計画が開始されており,2020-30年代の初代星痕跡の発見が期待される段階にきている。また,重力波干渉計LIGO・VIRGOによる重力波イベントの検出により,重力波を道具とする新時代へと突入した。そのため,初代天体について理論と観測とをつなげて理解を深める研究が求められている。そこで本研究では,初代星の痕跡の観測的な実証にむけて,理論面から多角的にアプローチした。

初代星の痕跡に迫るため,本研究では以下の3点に着目した研究を行った。

  1. 大質量初代星の超新星爆発により放出された重元素の,低赤方偏移銀河間物質における識別可能性
  2. 重力波ソースの起源として期待される,初代星連星の原始星段階における進化・合体
  3. 銀河系内に存在することが期待される,低質量初代星の星間小天体による星表面汚染
  4. 本講演では,これらの研究の成果についてその詳細を紹介する。
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