つくば宇宙フォーラム

第120

ブラックホール直近領域の偏光画像から探る活動銀河核ジェットの駆動磁場構造

恒任 優 氏

京都大学


要旨

Event Horizon Telescopeが超巨大ブラックホールの直接撮像に成功したことにより、ブラックホール研究は画像観測からその性質を探る新たな時代を迎えた。特にその偏光画像はブラックホール付近の磁場構造を反映するため、活動銀河核ジェットの形成と駆動メカニズム解明への手がかりとして注目されている。本研究で我々は、偏光成分"ストークスパラメータ(I,Q,U,V)"について、シンクロトロン放射と自己吸収、およびファラデー効果を考慮した上で一般相対論的輻射輸送計算を行い、偏光イメージを理論的に予測した。

 第一にM87*について、直線偏光ベクトルは円盤成分から強いファラデー回転を受け、観測では偏光の強度が低下することを提示した。またこれまで微弱とされてきた円偏光成分についても、ブラックホール直近の高温高密領域で直線偏光からファラデー変換を受けることで増幅が起こり、そのイメージ特徴が揃った磁場構造を反映するというシナリオを初めて提示した。

 第二に銀河系中心のSgr A*について、円盤からの広がった放射により、観測者が上から見る場合にはリング状のイメージが、横から見る場合には三叉状のイメージが得られることを確認した。偏光成分については、円盤内のらせん状磁場を反映した"境界線"構造を持つ円偏光画像と、それに呼応して高い強度を示す直線偏光画像が得られるシナリオを提示した。

 更に本講演ではこれらの研究の発展形として、イメージ上での輻射強度、直線偏光、円偏光分布の間のズレと磁場ープラズマ構造との関係を、多波長にわたる観測でのジェット大規模構造の観点から統一的に議論する。

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