つくば宇宙フォーラム

第113

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FUGIN を用いた銀河系内における分子雲探査

齋藤 弘雄 氏

筑波大学


要旨

銀河において分子ガスは主要構成要素であり,その構造の特性は銀河の進化を考える上でも重要である。特に星の形成母体となる分子雲は分子ガスの特徴的な構造であり,その銀河内における空間分布や形成メカニズムの解明は重要な研究テーマでもある。近年の干渉計観測の進歩により,系外銀河において数多くの巨大分子雲が確認され,そこでの物理状態や星形成,さらには銀河内での進化に対する研究も進んできている。しかし,巨大分子雲は分子ガス構造の一部であり,銀河内における分子ガス構造の特性を把握するには,分子ガス構造の大部分を占める,より低質量の分子雲について把握する必要がある。

このようなダイナミックレンジの広い分子ガス構造を把握するため,銀河系内に対して分子ガス構造の把握を行い,その特性を明らかにする必要がある。このような観点から銀河系内域領域に対してなされたCOサーベイ(FUGIN)データに対して分子ガス構造の解明を行い,分子雲構造の同定を進めてきた。その結果,内部構造も含む約40万個の分子ガス構造を同定し,そのうち,分子雲候補として約35000個の構造を選定した。その質量範囲は50太陽質量から300万太陽質量,サイズ範囲は0.5 pcから70 pcであった。

本講演では,分子雲候補天体の選定方法の詳細を紹介し,選定された分子雲の物理特性,物理状態について報告する。また,分子雲の銀河内における空間分布について議論する。

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