つくば宇宙フォーラム

第95

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超エディントン降着の物理

大須 賀健 氏

筑波大学計算科学研究センター


要旨

ブラックホール周囲の降着円盤は、活動銀河核やX線連星など、明るくコンパクトな天体のエネルギー源と考えられている。降着円盤理論の礎である標準円盤理論は、クェーサーやX線連星の熱的放射を見事に説明したことで広く知られるようになった。しかしながら、この理論モデルは質量降着率が大きい(エディントン降着率以上)状況で破綻することが知られている。このため、大きなエディントン比(光度/エディントン光度)を持つと考えられる超高光度X線源や一部の活動銀河核などを説明することができないという問題がある。エディントン比が1程度もしくは1以上(超エディントン)になると、エナジティクスにおいてもダイナミクスにおいても、輻射輸送および輻射とガスの相互作用が重要となる。輻射加速によるアウトフローが発生するため、空間多次元も必要である。そもそも、エディントン光度を超えた状況でガス降着が実現できるかどうかも自明ではない。そこで我々は、多次元の輻射流体/輻射磁気流体シミュレーションによって超エディントン降着を調べた。その結果、密度分布および輻射場の非等方性により、定常的な超エディントン降着が実現可能であることを実証した。シミュレーションの結果を超光度X線源の観測結果と比較したところ、光度、輻射スペクトル、それらの時間変動、アウトフローのパワーを説明することができた。中性子星への超臨界降着や、巨大ブラックホール形成問題に関しても議論する。

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