つくば宇宙フォーラム

第16

ガス降着による超巨大ブラックホール形成理論構築に向けて

川勝 望 氏

筑波大学 宇宙物理理論研究室


要旨

クェーサーは超巨大ブラックホールへのガス降着によって非常に明るく輝く天体である。これまでの観測から,赤方偏移6を超える宇宙でクェーサーが発見された。このことは宇宙誕生後10億年の間に太陽質量の約10億倍もの超巨大ブラックホールが形成されたことを意味している。一方で,超巨大ブラックホール形成の理解には,角運動量輸送の問題,つまり,どのように銀河の大きさの約10桁も小さい領域に大量の物質を集めるのか,という問題を解くことが重要である。 近年,我々は銀河からのガス供給と銀河核ガス円盤(< 100pc) からブラックホールへの 質量降着を考慮した理論モデルを構築した。さらに,この理論モデルを発展させ,z >6 高赤方偏移クェーサーの形成可能性について調べた。その結果,『成長中のクェーサー』は (i) 銀河核円盤で爆発的な星形成が起こること,(ii) Super-Eddington降着天体であることを予言した。本講演では,Super-Eddington降着天体から出る輻射の異方性に注目した『成長中のクェーサー』を探す新しい方法についても紹介する。