つくば宇宙フォーラム

第139

ダークマターは何者か?:暗黒物質の解明に向けた近傍宇宙論研究の現状と将来展望

林 航平 氏

仙台高等専門学校


要旨
宇宙の物質の大半は暗黒物質によって支配されている。しかしその正体は未だ謎のままであり,現代物理学において最大の問題の1つとなっている。 この未知の物質の正体解明のため,素粒子物理学から天文学まで幅広い分野において様々なアプローチがされている。 その中でも天文観測によるアプローチの1つである,銀河系矮小楕円体銀河(以下,矮小銀河)を用いた暗黒物質理論への制限について主に紹介する。 矮小銀河は暗黒物質が豊富に含まれた銀河であるため,その基本的性質を調べる上で最適な天体の1つである。特に暗黒物質密度分布を詳細に調べることは,暗黒物質理論モデルの検証に重要な役割を果たしている。 本講演では,まず矮小銀河の基本的性質について概観する。そして,矮小銀河の恒星ダイナミクスに基づく暗黒物質密度分布推定の現状と,暗黒物質モデルへの制限について自身の研究成果も交えて紹介する。また,最近の矮小銀河観測の進展を抑えた上で,2024年から本稼働予定のすばる多天体分光器(Subaru-PFS)を中心とした次世代観測装置による矮小銀河ダークマター研究の将来展望についても紹介したい。 Image