つくば宇宙フォーラム

第129

電波観測で探るマイクロクエーサーSS433のジェットによる宇宙線粒子加速

酒見 はる香 氏

鹿児島大学


要旨
1970年代の発見以来,マイクロクエーサーSS433は銀河系内の最も活動的なジェット天体の1つとして注目を集め続け,数多くの研究が行われてきた。しかしながら,その主星や伴星の正体,天体までの距離の同定など現在でも多くの未解決問題が残されている。さらにはSS433の周辺を取り囲む巨大な電波星雲W50についても,その起源は完全には明らかにされていない。 近年,SS433ジェットからTeVガンマ線が検出された。これはジェットによって宇宙線が高エネルギーに加速されていることを意味しており,マイクロクエーサーを含むX線連星が系内の有力な宇宙線加速源の1つであるという示唆を与える結果となった。理論研究では,系内ジェットに形成される衝撃波で宇宙線を$10^{15}$ eVよりも高いエネルギーに加速可能であるとの主張もなされており,長年解明されていない$10^{15}\sim10^{18}$ eVのエネルギー帯の宇宙線加速源の正体に迫る重要な足掛かりとなると期待されている。 本講演ではSS433/W50の基本的な性質や未解決問題に触れつつ,特に宇宙線加速源としての性質に着目し,電波観測に基づいた宇宙線の加速可能な最高エネルギーの推定結果について紹介する。 Image