つくば宇宙フォーラム

第96

Image

近傍銀河の分子ガス撮像観測プロジェクトCOMINGで探る分子ガスと星生成

徂徠 和夫 氏

北大・筑波大クロスアポイント 


要旨

銀河内部のどこでどのようにして星が生成されるのかということを知ることは,銀河においてガスから星へと転換してきた進化史を解明する上で不可欠である。しかし,ミリ波の分子スペクトル線観測の技術的制約から銀河の内部構造を分解した分子ガスの分布を系統的に明らかにした観測例はごく限られてきた。そこで私たちは,国立天文台野辺山宇宙電波観測所45 m電波望遠鏡のレガシープロジェクトとして,「近傍銀河の複数輝線による分子ガス撮像観測(CO Multi-line Imaging of Nearby Galaxies = COMING)」を立ち上げ,今春までに約150個の銀河の撮像観測を実施した。過去最大の分子ガス撮像観測であることに加えて,新しいデータ解析方法の考案等に時間を要したが,ようやくデータが出揃い,初期成果が出始めてきた。例えば,棒渦巻銀河の内部で分子ガスの密度がガスの運動の影響を受けて変化し,結果的に星生成効率に影響を及ぼしていると考えられる結果を得たが,これは銀河を空間分解して,複数の分子スペクトル線で観測できる利点を活かして得られたものである。

Image