第89回
星間空間ではこれまで190種類以上の分子が発見されている。その星間分子の組成の時間変化(化学進化)を利用することで,銀河系内の星形成研究は大きく進展してきた。近年では,ALMAなどの観測装置の感度向上により,化学組成を用いた研究手法が近傍の銀河にも展開できるようになってきた。一方で,近傍銀河の観測では分子雲スケール(~10pc)以下の構造を空間的に分解して観測することは難しいため,系内天体のような化学進化の概念をそのまま適用できるのか自明ではない。そこで,本講演では,分子雲スケールで観測した際の化学組成と,星形成,ガスダイナミクス,重元素量との関係について紹介する。