第87回
SCF (Self-Consistent Field)法は,無衝突恒星系のシミュレーションを行うN体計算の手法のひとつであり,3次元系では密度とポテンシャルを角度方向だけでなく半径方向も直交基底関数系で展開してポアソン方程式を解く方法である。SCF法は,各粒子にはたらく重力が2粒子間の相対座標に依存しないので,定式化において無衝突系を実現している。この方法は,通常のN体計算で必要となる重力ソフトニングが不要で純粋ニュートン力で相互作用を計算できるので,銀河円盤のような回転に支配された冷たい系に適していることや,完全な並列性を備えていることから非常に大規模なシミュレーションを実現できるなどの特徴がある。さらに,通常のN体計算法では困難な位相空間を再現することもできる。そこで,これまでに開発したSCF法に基づいた計算コードで行った,3次元円盤とダークマターハローの系や球状銀河どうしの合体シミュレーションなどを通してSCF法の現状を紹介し,SCF法に適した問題を議論する。