つくば宇宙フォーラム

第49

天文学における基礎物理定数の観測

大嶋 新一 氏


要旨

基礎物理定数は本当に変化しないのかという疑問を最初に取り上げたのはDiracであり,1937年のこととされている。 それ以来,様々な検証実験や観測が行われてきたが,いまだに明確な結論は出ていない。 特に分光学的な手法を用いた研究としては微細構造定数αや陽子電子質量比μの観測などがあるが,その具体的な方法としては種類の異なる高性能な原子時計を比較する方法や,天文観測により遠方の原子・分子のスペクトルの変化を検出する方法などが上げられる。 講演者はこれまで主に原子時計の分野に身を置いてきたが,最近のその分野の論文で定数の変化を積極的に主張している例はまだ見られない。 一方,天文学の分野では現在も様々な活動が展開されており,定数の変化に対する肯定的なデータも否定的なデータも共に報告されている。 またその解釈をめぐっても新しいアイデアが提案されるなど,大変活発な研究分野であるように見える。 素人ながらこれらの天文分野における活動に興味をもち,最近の目立った報告などをまとめてみた。 この講演では,これらの報告をもとに議論し,今後の天文観測の方向性などを見出すことができたらと考えている。