第47回
近年観測的に確かめられている早期型銀河のサイズ進化は,早期型銀河の形成・進化における大きな問題の一つである。 このサイズ進化を説明するシナリオとして,星間ガスをほとんどもたない銀河同士の合体,'dry merger'シナリオが提案されている。 我々はこれまでに,このdry mergerによるサイズ増加の有効性についてN体シミュレーションを用いて調べてきた。
本講演ではまず,球対称の恒星系とダークマターハローの2成分系の銀河の dry major/minor merger シミュレーションの結果を紹介する。 この研究において我々は,継続的なdry minor mergerが効果的なサイズ増加を引き起こすことを示した。
しかしながら,この研究では銀河の合体史や銀河合体の軌道パラメータを仮定している。 そこで次に我々は,より現実的なセットアップとして宇宙論的N体シミュレーションの結果を用いた。 具体的には,ダークマターのみの宇宙論的N体シミュレーションから得られたz~3の原始銀河団に分布する50個のダークマターハローを,恒星系とダークマターハローから成る力学平衡系で置き換え,その後の進化を追うという手法をとった。 この'宇宙論的dry mergerシミュレーション'を用いて,早期型銀河の多く存在する銀河団環境でdry mergerによる銀河のサイズ増加が有効に働くかどうかを調べた。 本講演の後半では,この結果についても紹介する。