第41回
銀河団物質など我々の宇宙を満たすバリオンガスは磁化していると考えられているが,この磁場(銀河間磁場)がどこからやってきたのか,実は全く分かっていない。 この銀河間磁場を観測できる数少ない方法の一つとして,センチ波メートル波偏波のファラデー回転がある。 事実,国際電波干渉計計画 Square Kilometer Array (SKA) では「Cosmic Magnetism(宇宙磁場)の起源と進化史の解明」をキーサイエンスプロジェクトの一つに据えている。
本研究では,MHD乱流ダイナモに基づいて,銀河間磁場そして天の川銀河磁場のファラデー回転度(RM)がどういった特徴をもつのか計算したので 報告する。 我々の研究によれば,現在の近傍宇宙での大規模構造フィラメントにおけるRMの平均二乗偏差は1 rad m^{-2} 程度で,電波源の赤方偏移分布を考慮しながら赤方偏移5まで考慮すると数-10 rad m^{-2} 程度である(Akahori, Ryu 2010; 2011)。 この検出にとって前景となる天の川銀河磁場のRMの偏差は,もっとも寄与の小さいと思われる銀極方向においても2-5 rad m^{-2}であるが,構造が決定的に異なる(Akahori et al. 2012)。 これらの値は従来の偏波観測では誤差に埋もれるが,SKAやそのパスファインダーでは検出できるだろう。 本講演ではまず,乱流やMHD乱流ダイナモとは何なのかについてごく簡単に解説したあとで,研究結果について報告し,日本SKAコンソーシアム宇宙磁場サブサイエンスワーキンググループの活動についても簡単に報告する。