第36回
近年,ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡に代表される地上大型望遠鏡を最大限活用した近傍の深宇宙探査により,現在も続く銀河進化の過程を垣間見ることができるようになってきた。 アンドロメダ銀河においては,SDSS等の観測によって,おびただしい数の暗い矮小銀河が発見されるとともに,それら矮小銀河の衝突によるものと思われるステラーストリームやステラーシェル等の痕跡が続々と明らかにされてきている。
特にアンドロメダの涙(アンドロメダストリーム)に関しては,観測・理論の両面からの研究が進展してきており,矮小銀河衝突の際の軌道運動やその時期,衝突した銀河の質量や化学組成等について理解が進んできている。 これまで行われてきたN体シミュレーションの解析によれば,このような構造を形成するためには 矮小銀河の力学的質量が十億太陽質量程度であるという制限がついている(Fardal et al. 2007; Mori & Rich 2008; Miki et al. 2010)。
講演ではN体計算と3次元の流体力学計算を組み合わせた最新のハイブリッドシミュレーションの詳細とアンドロメダ銀河の円盤ガスと矮小銀河に付随するガスの流体力学的な相互作用について報告する。 特に,銀河円盤ガスと矮小銀河ガスの相互作用により発生する銀河円盤ガスの流体力学的な挙動と,最近の観測データとの比較について詳細な議論を行う予定である。 また,時間が許せばこのような銀河衝突と銀河中心ブラックホールに関する研究成果についても紹介する。