第30回
これまでの研究により,重元素を含まないガスから形成される PopIII星は,100~数100太陽質量の大質量星となる可能性が 高いことが示されている。このような大質量星は,強い紫外線を放射 するため,原子の電離や分子の解離を通じて周囲のガス雲の重力 不安定に大きな影響を及ぼす。第一世代天体の中で生まれるPopIII星 の質量関数を決定するためには,このような輻射性のフィードバックを 正しく計算する必要がある。
我々は,この問題を調べるために,3次元輻射流体力学計算を行って きた。その結果,1番目の星の近くで生まれるPopIII星の質量は,輻射性 フィードバックを考慮しない場合に比べてかなり小さくなることがわかった。 また,光源となる星の質量依存性を調べ,電離光と解離光の強度比が このフィードバックの効果に大きく影響することを明らかにした。 発表では,基礎物理過程を説明し,数値シミュレーション結果について 報告するとともに,残された課題について議論する。