第15回
第一世代星(PopIII星)の初期質量関数(IMF)は,宇宙再電離や原始銀河形成,初代ブラックホール形成を決定づける重要な量である。IMFを求めるためには, PopIII星の形成に必要なダークハロー質量(およびその中でのバリオンガス質量),そこで形成される星の質量を決定しなければならない。 従来の研究では,PopIII星の形成に必要なダークハロー質量は,およそ10^6Msunであり,バリオンガス質量は10^5Msunであることが示されてきた。また,形成されるPopIII星質量は100-1000Msunとなるという結果が得られてきた。我々は,この問題を再考し,宇宙シミュレータFIRSTを用いた高分解能流体シミュレーションを実行した結果,ダークマターカスプの効果によって必要なダークハロー質量が10^4Msunまで下がり,バリオンガスの最低質量も10^3Msunとなることを見出した。また,3次元輻射流体力学計算により,初代星に引き続いて起こるPopIII星形成は,初代星からの紫外線放射の効果を強く受け,PopIII星質量が20Msun近くまで下がりうることを示した。これらは,PopIII星は,従来考えられていたよりも低質量の星が数多く存在する可能性があることを示している。講演では,これらの研究の詳細を紹介するとともに,PopIII IMFの決定に残された課題について議論する。