第10回
アンテナ銀河のような衝突初期の相互作用銀河は広がったスターバースト領域と星団形成領域を持つことが知られている。しかしながら,従来の相互作用銀河の数値シミュレーションでは,スターバーストは合体の最終段階でしかおきていなかった。本講演では,これら観測的特徴が超高分解能の銀河衝突シミュレーションのもとで自然に生じることを確認したので報告する。
従来の銀河衝突シミュレーションでは,ガス粒子質量は 106 太陽質量程度であり,状態方程式は等温(~104 K)か,104 K 程度で冷却を止めるものであった。我々のシミュレーションで用いたガス粒子質量は~103-4 太陽質量である。このように高い質量分解能を用いたので 104 K 以下の星間ガスの重力収縮を扱うことが出来る。ガスは 10 K までの冷却を解き 100 n_H cm-3 以上の高密度領域で星に変わるとした。星形成過程は,Schmidt 則を採用した。また,Type II 超新星爆発の効果を考慮している。
我々の行った銀河衝突シミュレーションによると,初期遭遇時に衝突面に全長~10 kpc に達する巨大なフィラメントが形成される。このフィラメントは,低温高密度 (T<100 K & n_H > 100 cm-3)ガスからなり,形成直後に空間的に広がったスターバーストを起こす。フィラメントのなかで形成された星はほぼ速度ゼロでフィラメント状に分布するためすぐに重力的に凝集し自己重力で拘束された星団を形成する。これらの星団は超新星爆発の効果による星形成の抑制と母銀河からの潮汐相互作用によって成長を止める。最終的にフィラメント中に 10 個程度の星団が形成された。星団の典型的質量は 107 太陽質量であり,暗黒物質をもたないという特徴を持つ。こうして形成された星団は,現在の銀河に付随する球状星団に対応する可能性をもつ。