第6回
分子雲の主成分である水素分子H2は等核原子からなる分子なので電気双極子モーメントを持たず,分子雲の典型的な温度である~10 Kでは直接に観測することが困難である。そのため通常は双極子モーメントを持つCOの観測から間接的に水素分子の量が推定されている。しかしその推定は不確定性が大きいので,できれば直接観測できることが望ましい。水素分子の振動回転遷移による放射は近赤外線にあり,電気四重極子による純回転遷移による放射は中間赤外線にある。特に後者は数百Kの分子雲であれば十分に放射されるので,活発な星形成銀河であれば観測可能である。今回は水素の回転遷移による輝線の観測の現状紹介と将来の南極望遠鏡による観測の可能性について述べる。