57th Uchu Forum
スーパーカミオカンデによるニュートリノ振動の発見により,ニュートリノは質量を持つ素粒子であるということが確認された。 しかしニュートリノ振動の実験では質量の大きさは分からず,3世代あるニュートリノ質量の2乗差しか測定できない。 一方,ニュートリノ質量の大きさは宇宙の密度ゆらぎの成長に影響を与えるため,宇宙マイクロ波背景放射や銀河の大規模構造の観測から,ニュートリノ質量の大きさに対し直接制限を与えることができる。
そのような密度揺らぎの観測手法として近年注目されているのが,21cm線と呼ばれる中性水素起源の電波の観測である。 この21cm線の観測を用いれば,宇宙の暗黒時代やその後に続く中性水素が電離していく時期(宇宙再電離期)のような,赤方偏移が大きな時代を観測することが可能である。
本セミナーでは,21cm線観測の概要と,その21cm線観測によりどの程度ニュートリノ質量とその階層構造が将来制限できるかについて,我々が行った解析の結果を話したいと思う。