19th Uchu Forum
銀河団には高温のプラズマ状態にある銀河団ガスが存在することが良く知られ ているが,銀河団ガスを観測する手段としては,X線領域での高温プラズマの 熱制動放射の観測が主流である。一方,銀河団ガス中の高温電子ガスが宇宙マ イクロ波背景放射の光子を逆コンプトン散乱で叩き上げるSunyaev-Zeldovich (SZ) 効果は電波領域で観測され,銀河団ガスの物理状態についてX線観測とは 相補的な情報を与えてくれる。一般にSZ効果は観測が困難で,10年前には電波 天文学において間違いなくマニアックでオタクな観測対象であったが,今日で はSZ効果専用電波望遠鏡が複数建設されるなどその科学的な意義が重要視され るようになりつつある。 銀河団同士の衝突の現場である衝突銀河団は,ダークマターの重力相互作用, 銀河団ガスの作る衝撃波によるガスの加熱,その衝撃波における粒子加速など, 宇宙物理学における様々な重要なテーマを含む観測対象である。本講演では, 大きなマッハ数で衝突する衝突銀河団のSZ効果を詳細に観測することによって, 銀河団中の高温プラズマでのイオンと電子間の熱的緩和過程やその衝突速度に ついて,X線観測よりも直接的に評価できることを示す。