つくば宇宙理論セミナー

第15

数値シミュレーションによる高エネルギー天体物理学

長滝 重博 氏

京都大学基礎物理学研究所


要旨

宇宙では謎に満ちた様々な高エネルギー天体現象が観測されています。 今回のセミナーでは,スーパーコンピュータ─の発展により,数値シ ミュレーションによって高エネルギー天体の理解が大きく進んでいる ことを紹介したいと思います。高エネルギー天体現象の少なからずが 非熱平衡にある系の現象である一方で,従来の数値シミュレーション では熱平衡を仮定した計算が行われていることが少なくありませんで した。それ故,高エネルギー天体現象と数値シミュレーションは必ず しも相性の良いものではないと言えるかもしれません。しかしながら, 私はスーパーコンピューターの発展を背景に,数値シミュレーション によって高エネルギー天体現象の理解が現在大変深まっていること, そして今後もその進展が期待されることを述べます。本セミナーでは, 一般相対論的磁気流体コードの開発とガンマ線バーストジェット形成 シミュレーション,ガンマ線バーストジェットからの熱的放射,超新 星ジェットに於ける爆発的元素合成,ガンマ線バーストからの高エネ ルギーニュートリノ,最高エネルギー宇宙線,Be星-パルサー連星から の高エネルギー放射など,時間の許す限り数値シミュレーションによ る高エネルギー天体物理学を紹介したいと思います。