Tsukuba Uchu Forum

51st Uchu Forum

Lyα輝線銀河探査で探る宇宙再電離

Takatoshi Shibuya

University of Tsukuba, theoretical astrophysics group / Institute for Cosmic Ray Research, University of Tokyo


Abstract

宇宙は高温・高密度状態のビッグバンで開闢したが,急激な膨張により温度と密度が下がり,約 38万年後には電離状態にあった水素が中性化する。 その後しばらくは中性水素主体の時代が続くが,やがて形成される初代天体からの電離放射を浴び,宇宙空間にある中性水素が再び大規模に電離される。 このような初期宇宙におけるイベントを「宇宙再電離」と呼ぶが,それがいつ・どのように起こったのか,は現在でも詳しく分かっていない。

これに対して,これまでにすばる望遠鏡 Suprime-Cam により赤方偏移(z) 7に至るまでの各時代の Lyα 輝線銀河 (LAE)が探査され,中性水素増加に伴う Lyα 光の減光を調べることによって制限を付けられてきた。 しかし,z=7 を超える時代では LAEの大幅な個数密度の低下,赤外線付近の波長域での CCD 感度の低下から詳しい調査が困難となっていた。 そこで我々は,赤感 CCD を搭載したSuprime-Cam と特殊狭帯域フィルター NB1006 を用いて z=7.3 LAEの広視野探査を行ったので,初めにその成果の概要について紹介する。

一方で遠方銀河からガスの流出(アウトフロー)があると,再電離初期の宇宙であっても Lyα光はさほど減光されずに中性水素ガス雲から抜け出す可能性がある。 すなわち遠方銀河におけるガスの速度構造を詳しく探る必要があるが,典型的に暗い銀河種族であるLAE のガスアウトフローはあまり調べられていない状況にある。 そこで我々は HETDEX-LAEと呼ばれる,サンプルが空間集中しており且つ比較的明るい LAE サンプルに着目し,それらのアウトフローの有無をすばる望遠鏡 MOIRCSを用いて調べた。

最後に,すばる望遠鏡次期広視野装置 Hyper Suprime-Cam を用いた z>7 LAE 探査,LAE アウトフロー研究の展望を述べる。