50th Uchu Forum
次世代位置天文学衛星の打ち上げが次々と予定され,今はちょうどそれらの打ち上げが直前まで迫っている。 例えば,今年にはESAからGaiaが打ち上げられ,来年末には日本のNano-JASMINEなども打ち上げが計画されている。 これら次世代位置天文学によって期待される成果の一つとして,太陽系近傍での暗黒物質密度の測定がある。 局所暗黒物質密度の決定は天文学の古くからの問題であったが,未だにその測定値は研究者によって様々である。 局所暗黒物質密度の決定は,銀河系の暗黒物質ハローの形状の推定や,暗黒物質粒子の検出実験などにおいて重要な意味を持つ。 本研究では,力学的に無矛盾な銀河系の解析モデルを用いて位置天文学的“疑似”観測を行い,局所暗黒物質密度を正確に決定するために必要な観測精度やサンプル数などを割り出した。 結果,必要とされる位置天文学的精度は0.1ミリ秒角以下と計算された。 この精度は過去のヒッパルコス衛星の精度よりも1桁高く,将来のGaiaの精度よりも1桁低い。 つまり,過去の位置天文学衛星のデータを用いた先行研究は暗黒物質密度を正しく求めることは出来ておらず,今後のGaia衛星の観測データによって正確に決定できることが期待される。