17th Uchu Forum
ダークマター粒子の正体が100GeV-1TeVの質量を持つニュートラリーノであれば,最小のダークマターハローは地球質量程度になると考えられる。このマイクロハローが現在まで生き残っていると,ダークマター対消滅によるガンマ線の主なソースになるが,生き残るかどうかについては論争があった。生き残るかどうかは構造,特に中心密度によるが,従来のシミュレーションでは分解能が不足していてはっきりした結論が得られていなかった。 そこで我々は高分解能の宇宙論的N体シミュレーションを用いて,地球質量マイクロハローの構造を調べた。その結果マイクロハローの密度構造は外側から中心まで -1.5 乗のカスプであることがわかった。これは従来考えられていた -1 乗程度のカスプとは大きく異なる。これらマイクロハローは恒星による近接遭遇を経験しても,中心部が高密度であるために,銀河系の大部分で,ほとんど破壊されることなく生き残る。 このようなマイクロハローは,銀河全体に銀河ハローのダークマター分布と同じように分布する。結果として,銀河ハロー自身よりも対消滅によるガンマ線光度が大きくなり,ブーストファクターは太陽近傍で約20,銀河全体で約1000にもなる。太陽近傍のマイクロハローは中心部の視角が Fermi の分解能と同程度であるため,大きな固有運動を持った明るい点状のガンマ線源として観測されると考えられる。