5th Uchu Forum
宇宙第一世代星については,かつて間違いなく存在したは ずであると言う事以外は何も分かっていない。 第一世代星は最初の光を放ち,宇宙暗黒時代の終焉を告げ る。また進化の最後に超新星爆発をおこして重元素をばら まき,その後の原始銀河形成や宇宙再電離に大きな影響を 及ぼすと考えられる。直接観測により第一世代星の情報を 得ることは未だに困難であるが,最近では極超低金属星の 詳細な観測などから間接的な証拠を得ることができるよう になってきた。 さらに,第一世代星については理論と数値シミュレーション を組み合わせた研究が極めて有効である。最近の宇宙観測 からは,宇宙の構成要素や初期密度揺らぎの詳細が分かる ようになり,標準宇宙モデルが確立された。構造形成の大 枠が定まったと言える。また,第一世代星の形成に関わる 物理は重力,流体力学,化学反応や輻射輸送など多岐にわ たるものの,これらはいずれも既知の物理である。 極言するならば,第一世代星形成は現代物理学を結集すれ ば解けるはずの問題である。
我々は第一世代星形成の大規模宇宙論的シミュレーション を行った。標準宇宙モデルの予言する初期密度揺らぎから 計算をはじめ,上記の物理過程を直接的に取り入れて系を 進化させた。結果は次のようにまとめられる。宇宙年齢 数億年の頃,最初にできるのは質量が0.01太陽質量程度の原始星。原始星はすぐにまわりのガスを降着して100太陽 質量程度になる。ガスの降着が数百万年以上続く場合には,質量は1000太陽質量近くにもなり,星は最終的には崩壊して ブラックホールになる。セミナーではこれらの過程の詳細を 発表し,宇宙論的意義を議論する。