ブラックホール周囲のガスダイナミクスを解き明かすためには、一般相対性理論、電磁流体力学、輻射輸送をすべて組み込んだ計算、即ち一般相対論的輻射磁気流体力学(GR-RMHD)計算が必要です。GR-RMHDは物理素過程が難解なだけでなく、計算量が膨大であるため、スーパーコンピュータを用いて数値的に解くしか手段がありません。そのような背景のもと、世界に先駆けてGR-RMHDのシミュレーションコードを開発・発展させています。2015年に稼働開始したGR-RMHDコード、UWABAMI、は高光度ブラックホール降着円盤や輻射駆動ジェットの再現に成功するなど、多大な成果を上げてきました。さらに精緻に輻射場を解くGR-RMHDコード、INAZUMAが完成し近日中に稼働予定です。数値的な輻射の拡散を最小限に抑えるため、測地線に沿って輻射輸送方程式を解く手法(ARTISTコード)の実装が将来計画となっています。
図 1 一般相対論的輻射磁気流体力学計算コード、INAZUMA、によるブラック降着円盤とジェットの密度分布(左)と輻射エネルギー密度分布(右)の断面図