つくば宇宙理論コロキウム
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第55回
相対論的Godunov SPH 法による高密度天体からの高速噴流の解析
名古屋大学
要旨
活動銀河核のジェットやガンマ線バーストといった天文現象において,相対論的噴流現象が広く観測されている。しかし,これらの噴流を駆動する加速機構については,未だに解明が十分ではない。近年の研究では,ジェットが初期段階で光速の約90%に相当する速度を持つ場合,噴流する方向に対して垂直な方向への膨張によってローレンツ因子が100 程度まで加速されることが示されている。しかし,このような初期速度がどのようにして獲得されるかについては依然として不明である。 本研究では,新たに開発した特殊相対論的SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を用い,相対論的高温ガスが真空中に噴出する際の加速過程を解析した。その結果,ベルヌーイの定理に従い,静止したガスが光速の約95%まで加速されるプロセスを数値的に再現することに成功した。本講演では,相対論的高温ガスが真空中でどのように加速されるかを解明するために実施した研究について報告する。特に,真空環境が加速過程に果たす本質的な役割を明らかにするとともに,数値計算における主要な困難点についても議論する。また,本研究で開発した相対論的SPH 法の技術的な詳細を説明し,得られた解析結果を示す。