Theoretical Astrophysics Seminars

12th Seminar

Image

Black Hole Flywheel Engine Theory and Applications to statistical AGN characteristics

Nitta Shinya

Tsukuba University of Technology


Abstract

ブラックホール(BH)によるエネルギー解放機構は,大きく分けて2種類知られている。一つは,降着物質の重力エネルギーをBHの深いポテンシャルによって解放するもので,Fuel engineと呼ばれている。もう一つがFly-Wheel engineで,こちらはBH自身のもつ巨大な回転エネルギーを電磁気的なプロセスによって解放するものである。これまでのほとんどの研究はFuel engineに関するものであるが,Fly-Wheel engine には以下の魅力的な特徴があり,近年再度注目されている。

AGNのエンジンモデルとしてBHエンジンを考える場合,Fuel engineで最も重要なのは,質量降着率を見積もることである。そのためには銀河全体に渡る角運動量 輸送を解く必要があるが,これは非常に困難であり,質量降着率は一般的にはパラメータとして扱われる。これでは,モデルにとって最も本質的な量を手で与える事になってしまう。一方,Fly-Wheel engineでは,BH近傍の磁気圏構造が全てを決定するため,理論的にはより厳密に扱い易い。また,BH自身のエネルギーを解放する事から,BH物理として興味深い。AGNに応用した場合,Fuel engine,Fly-Wheel engine ともにほぼ同等の出力が予想される事から,Fly-Wheel engineはもっと注目されて然るべきと考えている。

BH Fly-Wheel engineで最も有名なモデルはBlandford-Znajek(1977)のモデル(BZ モデル)であり,近年ではGRBや超新星/極超新星の磁気的爆発機構とも関連して注目されている。しかし,BZモデルではBH磁気圏プラズマを磁気優勢極限(MHD近似をした上で磁場が強い極限を考えプラズマの慣性の効果を全て無視する。Force-Free 近似とも呼ばれるが,これは誤解を与えるのでここでは使わない。)で扱っており,適用性には限界がある事を認識しなくてはならない。

講演者らは,BH磁気圏プラズマをMHD近似して,プラズマの慣性の効果を含めた拡張理論を構築した(高橋他90年,新田他91年)。本セミナーでは,MHD BH Fly-Wheel engine モデルのエッセンスを簡単に紹介し,このモデルをAGNの集団に応用した場合に予想される統計的性質に付いて論じる。AGN BHのIMFとして,Press-Schechter型を仮定し,AGNの集団の統計性を与える。BH Fly-Wheel engineの永年的進化は,BH 質量に強く依存するので,個々のAGNはIMFで与えられた質量に応じて異なる進化をする。その結果,

  1. luminosity functionの進化では,高光度の端から光度を増し,その後急速に減光する。
  2. AGN空間密度のz依存性では,QSOクラス(絶対-26等級)では約z=2に,より暗い-23等級ではz≤1に極大が出来る。

などが分かった(新田99年)。BH Fly-Wheel engineは,AGNの観測されている性質を第1原理から説明するために有用である。

References:

  • M.Takahashi, S.Nitta, Y.Tatematsu, A.Tomimatsu, 1990, ApJ, 363, 206
  • S.Nitta, M.Takahashi, A.Tomimatsu, 1991, PRD, 44, 2295
  • S.Nitta, 1999, MNRAS, 308, 995
Image