素粒子宇宙研究部門




計算素粒子物理学分野

クォークの基礎理論からのハドロンの直接計算と、自然界の基本パラメータの決定

1クォークの基礎理論である量子色力学(QCD)から陽子や中性子などのハドロンの性質を導くためには、大型計算機による格子QCDの膨大な計算が要求される。こうした計算は、2基礎理論の精密検証であると同時に、クォーク質量や結合定数などの自然界の基本定数を決定するためにも重要である。計算素粒子物理学グループは、専用並列計算機CP-PACSの開発などにより、この分野の世界的な研究拠点を形成してきた。右の図はCP-PACSによるクォーク質量の計算結果である。我々の結果は、Particle Data Group の基本定数表に引用されるなど、3大きなインパクトをもたらした。これに並行して、他の方法では計算が難しい様々なハドロン行列要素の計算(左図)や、クォーク・グルオン・プラズマの熱力学特性の研究、格子場の理論におけるカイラル粒子の研究なども推進されている。

素粒子の完全なシミュレーションに向けて

4クォークの計算には膨大な計算量が要求されるので、通常は最も軽いu, dクォークのみを正確に扱う近似でシミュレーションされている。しかしQCDの典型的エネルギースケールはsクォークの質量程度であるので、sクォークまでは重要な効果があると考えられている。我々は現在、sクォークまで正確に扱った研究を、高エネルギー加速器研究機構のスパコンや地球シミュレータなど、外部の高速計算機も結集したグランド・チャレンジ・プロジェクトとして推進している。




計算宇宙物理学分野

宇宙進化と天体形成

 宇宙における様々な天体現象は,重力,流体,輻射などの物理過程が複雑にからみ合った非線形現象である。このような複雑系の問題においては,超高速計算機による数値シミュレーションが威力を発揮する。
 計算宇宙物理分野では,重力,流体,輻射を同時に解く輻射流体力学計算を中心に,宇宙構造の成り立ちや銀河や星・惑星系の誕生過程の解明取り組んでいる。

HMCS(CP-PACS+GRAPE)による銀河形成の3次元輻射流体シミュレーション CP-PACSによる宇宙再電離過程の3次元輻射輸送計算
HMCS(CP-PACS+GRAPE)による銀河形成の
3次元輻射流体シミュレーション
CP-PACSによる宇宙再電離過程の
3次元輻射輸送計算

数値天文台構想

 大型観測装置による成果と理論を両輪とした天文学の飛躍的発展を図るため,観測密着型大規模数値シミュレーションによる“数値天文台”構想を進めている。

CP-PACSによる誕生期の銀河の超高分解能流体計算と観測イメージ CP-PACSによる誕生期の星の輻射輸送計算による観測イメージ
CP-PACSによる誕生期の銀河の
超高分解能流体計算と観測イメージ
CP-PACSによる誕生期の星の
輻射輸送計算による観測イメージ