「我々の住む宇宙はどのように始まり、どのようにして今日の宇宙が出来上がったのだろうか。」 これは人類の歴史が始まったころからの根源的な問いかけに他なりません。 そして、このようなことを物理学の立場で研究する分野が宇宙論であり宇宙物理学です。 1984年ジョージ・ガモフによって発表された理論は、宇宙の始まりを議論する際のパラダイムとなり、20世紀から21世紀にわたって様々な実証観測がなされてきました。 我々の住む宇宙は今から138億年前に火の玉状態(ビッグバン)で誕生し、その後、宇宙全体が膨張しながら今日に至ることを示しています。
ビッグバン理論は、宇宙が誕生して間もない頃の宇宙には、水素とヘリウム以外の重い元素はほとんど存在しなかった事を予言しています。 一方、太陽系の約2パーセントは重い元素で構成され、我々人間の体は炭素やカルシウム、鉄、リン、塩素など様々な元素から出来上がっていることは周知のとおりです。 また、最新の宇宙観測データでは宇宙が誕生して間もない時代にすでに重い元素が存在する事が確認されはじめてきています。 それでは、このような元素はいつどこでどのようにして生成され、どのようにしてこの宇宙に分布するようになったのでしょうか。 さらに、我々の様な生命は宇宙進化のいつどこで発現したのでしょうか。
ビッグバンで宇宙が誕生した後、物質の大部分を占めるダークマターが宇宙全体に広がっていたと考えられています。 ダークマターは宇宙物理学ではその存在が不可欠とされていますが、素粒子実験ではまだ見つかっていない未知の物質です。 初期宇宙ではダークマターの空間分布のコントラストが重力の影響で次第に大きくなっていき、やがて高密度領域で恒星が誕生し、その後、星団や銀河の様な天体が形成されるようになりました。 恒星や超新星の核融合により新しい元素が合成され星間空間に放出されると、宇宙全体で様々な元素が分布するようになります。
このようにしてできた銀河は、銀河同士の合体や相互作用によってその後も進化が促進されることになります。 例えば、銀河系やアンドロメダ銀河のような大型の銀河は、宇宙誕生から小さな銀河の衝突・合体が繰返し発生し、数十億年かけて現在の様な形になったと考えられています。宇宙がそのような歴史を刻む中で、今から約40億年前に銀河系に太陽系が誕生しその中で我々人類が誕生しました。そして、今後数十億年経った未来には、銀河系とアンドロメダ銀河は衝突・合体して巨大な一つの銀河になると予想されています。 一方、銀河と銀河の衝突や合体は銀河を構成する恒星やガスの運動をかき乱し星形成のトリガーとなるだけではなく、銀河中心の超巨大ブラックホールの活動に影響を及ぼすと考えられています。
我々が完成を目指す標準銀河形成・進化模型では、銀河の形成・進化のみならず、宇宙における元素生成とその分布、ブラックホールの活動性、ダークマターの性質などの謎を解き明かすことを目標としています。 悠久の時の流れの中で我々の銀河宇宙がどの様に進化してきて、どのような未来が待ち受けているのかを、自然科学的な立場で詳細に描き出すことが我々の研究グループの研究活動の根源となっています。 以下では、研究内容の詳細や研究グループの活動について紹介しています。
現在の標準的な構造形成理論であるコールドダークマター(CDM)モデルは宇宙の大規模構造等の統計的性質を説明することに成功した反面、“カスプ-コア問題”や“ミッシングサテライト問題”に代表される銀河スケールで危機的問題が指摘されています。 これらは、銀河の形成・進化の問題と密接に関連するものであり、ダークマターの性質を解明する上で非常に重要な問題となっています。
カスプ-コア問題:
ダークマターハローの質量分布に関するこれまでの研究では、ダークマターハローは中心で質量密度が発散するカスプ状構造を普遍的に持つことが強く示唆されています。
一方で、近傍矮小銀河の回転曲線の精密観測では多くの場合ダークマターハローの中心質量密度分布はほぼ一定のコア状構造、もしくは理論予言よりは滑らかな質量密度分布(冪指数)を持つことが知られています。
この理論と観測の矛盾は“カスプ-コア問題”として広く知られています。
また、質量の中心集中度が高いダークマターハローを持つ大質量衛星銀河が見つからない“Too-big-to-fail問題”も、カスプ=コア問題と関連する問題として広く認識されています。
これまでの銀河形成シミュレーションの研究により、超新星等のフィードバックが重力場を変化させ、ダークマターハローの質量分布をカスプ構造からコア構造へ遷移させるという現象論的な理解が積みあがってきました。
しかしながら、その遷移を支配する基礎物理過程の理解は、未だ根本的な理解に至っているとはとても言い難い状況です。
ミッシングサテライト問題:
階層的構造形成論に基づいた宇宙論的N体シミュレーションによると、銀河系やアンドロメダ銀河程度の質量の銀河には、理論的には数100から1000個のサブハローの存在が予言されています。
一方で、実際にこれらの銀河で観測的に同定された衛星銀河はせいぜい50個程度しかありません。
このような衛星銀河数の一桁以上の不一致は”ミッシングサテライト問題”と呼ばれ、CDMモデルの抱える難問の一つとされています。
この問題を解決する糸口として、星がほとんど存在しない、つまり銀河形成に失敗したダークマターハローだけで構成される暗黒銀河(ダークサテライト)の存在が理論予言されています。
しかしながら、ダークサテライトが実在するかどうか、もし存在するならばどの様にして観測すれば良いかといった視点での研究は未だ発展途上です。
このようなダークマターハローの諸問題は、ダークマター自身の性質を理解する上で重要な問題であるとともに、ダークマターハロー重力場中での星形成過程や超新星フィードバック過程等の天体現象を介してお互いに関連しあうため、銀河の形成・進化過程とダークマターハローとの共進化を詳細に調べることが重要となります。 我々は、これまでに構築してきた銀河の光学化学力学進化モデルを駆使して、“カスプーコア問題”及び“ミッシングサテライト問題”といったCDMモデルの抱える問題に挑戦しています。
ダークマターハローのカスプーコア問題についてD1(2023年3月現在)の金田優香さんが、YouTubeで解説しています(8:35-10:14)。このインタヴューは、2023年ポツダムで開催されたIAU Symposium "Dynamical Masses of Local Group Galaxies"で収録されました。
銀河をとりまくダークマターハローは、さまざまな観測パラメータ間で強い相関関係を示しており、「ダークマターハローのスケーリング関係」として知られています。しかし、その起源にはまだ未解明のままであり、これを完全に理解するためには、広範な探求が必要です。 我々は、コールドダークマター模型に基づく宇宙論的N体シミュレーションから導かれるダークマターハローの中心集中度とダークマターハロー質量の相関関係(c-M関係)を利用して、ダークマターハローの表面質量密度、最大回転速度、スケール半径などの他の物理量間の理論的なスケーリング関係を導き出しました。そして、理論的なスケーリング関係とさまざまな質量スケールでの観測されたスケーリング関係を比較することにより、矮小銀河や通常の銀河で観測されるスケーリング関係がダークマターハローのc-M関係に由来することが分かりました。さらに、この理論的なスケーリング関係は、銀河団でも成立することを予測しています。
さらに、我々はコールドダークマターハローで起こると考えられている「カスプからコアへの遷移」の影響を組み込んだ新しい理論的なスケーリング関係を提案しています。カスプとは、ダークマターハローの中心部が非常に高密度で発散するような状態を指し、コアとは中心部がより平坦で広がった状態を指します。この遷移は、星形成や超新星爆発、その他のバリオン過程によるフィードバックメカニズムによって引き起こされると考えられています。これにより、ダークマターの分布が中心部でカスプ状から平坦なコア状に遷移すると考えられています。そして、我々は、ダークマターハローにおけるカスプからコアへの遷移プロセスの観測的な検証の可能性について検討しています。最近の研究では、カスプからコアへの遷移をより詳細に観測するための新しい手法を考案したり、観測データの精度向上やシミュレーション技術の向上により、より正確なダークマターハローの質量分布の検証が重要なポイントです。これにより、理論的なモデルと観測結果との比較がより精緻に行われ、ダークマターの本質や銀河形成のメカニズムに関する新たな知見が得られるでしょう。
ダークマターハローの力学進化に関する研究成果をM1(2021年12月当時)の金田優香さんが解説しています。これは、2021年11月29-12月2日に東京大学で開催された、ダークマター探索に関する国際シンポジウム「KASHIWA DARK MATTER SYMPOSIUM 2021」での発表です。 参加者投票により、金田優香さんは最優秀ポスター賞を受賞しました。
現在の標準的な銀河形成モデルであるコールドダークマターによる階層的構造形成論によると、銀河には星質量の倍以上のダークマターを含むことが知られています。 しかし、今世紀になり理論的に予測される質量よりも極めて少ないダークマターハローの質量しか持たないダークマター欠乏銀河の存在が続々と報告されはじめました。このようなコールドダークマター宇宙において極めて深刻な問題を解決するため、我々は原始ガスを含んだダークマターサブハロー同士の正面衝突現象によって誘発される銀河形成の物理過程を調査しました。
大質量銀河のホストハローに付随するダークマターサブハロー同士の衝突頻度を解析的に推定した結果、ホストハローのビリアル半径の10%の領域で1,000万年程度の小さな衝突タイムスケールとなり、頻繁にダークマターサブハローの衝突が発生しうることが分かりました。また、半径の増加とともに相対速度が増加する様子を示すことにも成功しました。 次に、解析的モデルと数値シミュレーションを用いてダークマターサブハロー同士の衝突現象を調査した結果、衝突速度に応じてダークマターを大量に含む通常の銀河やダークマター欠乏銀河の形成経路があることを示すことに成功しました。 相対速度が小さい場合、二つのダークマターサブハローが合体し、ダークマターが豊富な通常の銀河が誕生することになります。 一方、中程度の相対速度の場合には、二つのダークマターサブハローは互いに通過してしまいます。しかし、ガス成分は衝突して衝突面で急激にガス密度が上昇するため、そこで爆発的な星形成を起こす事になります。最終的に、衝突面ではダークマターをほとんど含まないような銀河が誕生することになります。我々は、これこそがダークマター欠乏銀河形成の重要な過程であると考えています。 さらに、相対速度が十分に大きい場合は、衝突面で発生した衝撃波がガスの表面に到達することで生じるショック・ブレイクアウトによって、大部分のガスが系に束縛されることなく雲散霧消してしまうため、銀河が誕生することはありません。
Otaki & Mori, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 25, 2535 (2023)参照
ビッグバン後、原始ガスから水素とヘリウムのみからなる初代星が誕生することになりますが、そのような星のうち比較的重たいものは、その寿命を全うすると超新星爆発を起こしその一生を終えることになります。 その際、星の内部や超新星爆発によって生成された元素が宇宙空間に撒き散らされ、星間ガスと混ざりあうことになります。 暫くすると、このようなガスからは少しだけ重元素を含むような新しい星が誕生し、また超新星爆発を起こすと、新たに生成された重元素をまた宇宙空間に戻します。 このような宇宙の物質循環過程(コスミック・リサイクル)が何度も繰り返されると、宇宙空間に存在する元素が次第に増加していくことになります。
下図では銀河形成シミュレーションの結果をしめしています。計算開始後、1億年程度(1番左のパネル)すると、原始銀河内で星が誕生し、やがて大質量星が寿命を全うすると超新星爆発を起こしその生涯を終えます。 するとその爆発の影響で矮小銀河内のガスが激しくかき乱され、多数の泡状の構造が形成されます。また、超新星によって放出された重元素はガス密度の小さい泡構造の内部に蓄積され、それを取り囲む高密度のガス殻では重元素量は少なくなっていることがわかります。 それは、この部分はもともと重元素を含まない原始のガスが爆発によって掃き集められたものだからです。 銀河進化のきわめて初期段階では、まだ銀河内の空間全体を均一に汚染するほどの超新星が発生していないために、星間ガスの化学進化の度合が異なっているためです。
(左)シミュレーションの結果。それぞれのパネルは、上段が星の密度分布、中段がガスの密度分布、下段が重元素(酸素)の分布を表し、左から、1億年、3億年、5億年、10億年の時間進化に対応しています。 (右)ガス密度の空間分布の時間変化。多重超新星爆発の衝突により、高密度のガスシェルやフィラメントが多数生成され、複雑な分布を呈するようになります。 (Mori & Umemura, Nature, 440, 644 (2006) 参照)
Pan-Andromeda Archaeological Surveyによって描きだされたアンドロメダ銀河周辺領域における大規模構造。 中央付近に見られる細長く伸びた恒星の集団構造が、アンドロメダ・ジャイアント・ストリームで長さが約45万光年、質量が1000万太陽質量以上と見積もられています。 (McConnachie et al., Nature, 461, 66 (2009)より改変)
現在の標準的な銀河形成の描像では、宇宙の初期に小さな天体が出来上がり、それらが合体を繰り返しながら大きな構造へと成長する階層的構造形成論が主流となっています。 特に、銀河形成は銀河の合体や相互作用によって促進され、その中でも矮小銀河と銀河の衝突が重要な要因です。 天の川銀河やその姉妹銀河のアンドロメダ銀河のような大型の銀河は、宇宙誕生から数十億年の間に重力によって小さな銀河と相互作用することで進化し、現在の様な形を形成してきたと考えられています。 そして、銀河と銀河の合体は銀河を構成する恒星の運動を乱し、新しい星形成を引き起こすことがあるだけではなく、銀河衝突によって銀河の中心の超大質量ブラックホールの進化が促進され、ブラックホールからのエネルギーの放出やジェットの形成などが観測されています。 これらの銀河衝突現象が銀河進化や銀河中心ブラックホールの進化の重要な鍵となっており、お互いがお互いの進化に影響を及ぼす共進化の重要な役割を果たすと我々は考えています。 観測装置の飛躍的な進歩と観測技術の発展は、遠方の銀河の様子を観測できるようになっただけではなく、我々の住む銀河系や近傍銀河の姿に大変なインパクトを与える事になりました。 これまでは不可能であった非常に暗い星々の観測が可能になり、我々が想像しえなかった銀河の本来の姿を垣間見ることになったのです。
上図は、アンドロメダ銀河の周辺領域をこれまでにない深い観測を行い、暗い天体を見つけ出したMcConnachieらによる観測結果です。 アンドロメダ銀河は上図の中心付近に位置し、その周辺に広がる複雑な形状をした構造や細長く伸びたストリーム構造が、非常に密度は低いが確実に存在する恒星の集団です。 これらは、今世紀になって初めて見つかった観測天文学の大発見の一つとなっています。 それまでに、信じられていた銀河の構造は、実は氷山の一角であり、その周辺に非常に大規模な恒星集団の複雑な構造が存在する事が目の当たりになったのです。 比較のために、天空上の月を同じ縮尺で画像に添えていますが、この構造の膨大さが感じることができると思います。それでは、このような大規模構造はどのようにして出来上がったのでしょうか。
我々はスーパーコンピュータを駆使した大規模シミュレーションを実行し、この問題に挑戦しています。 その結果、世界で初めてこの謎を解き明かすことに成功しました。 今から約10億年前にアンドロメダ銀河の1/400程度の質量しかない小さな銀河がアンドロメダ銀河の強い重力に捕まり、バラバラに引き裂かれる様子がシミュレーションにより明らかにされました。 この銀河の残骸は約40万光年にも渡って夜空を流れるアンドロメダ・ジャイアント・ストリームを作り上げ、幾重にも重なる貝殻状の恒星の集団を産みだすことになりました。このような銀河衝突は、銀河進化に大きな影響を及ぼす事が示されました(下図参照)。 このことは、階層的構造形成論の予言する銀河の誕生期の銀河衝突現象が、アンドロメダ銀河の様な大質量で成熟した銀河でさえも未だ継続的に発生している事実を明らかにしたのです。 このようなアンドロメダ銀河周辺構造の精密観測は、新しく計画されている世界最先端の観測装置を用いた将来観測計画においても中心プロジェクトして採用され、我々も理論グループとして協力しています。
(左)アンドロメダ銀河と矮小楕円銀河の衝突シミュレーション。青い細長い部分がアンドロメダ銀河に相当します。 (Kirihara, Miki, Mori, Kawaguchi & Rich, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 469, 3390 (2017)より改変) (右)アンドロメダ銀河と矮小楕円銀河の衝突シミュレーション。青い細長い部分がアンドロメダ銀河に相当します。(Mori & Rich,ApJ,674,L77, 2008)
銀河中心の大質量ブラックホールに十分な量のガスが落下(降着)すれば、ガスの位置エネルギーの解放により、活動銀河核として明るく輝くことが知られています。 大質量ブラックホールへのガス供給は角運動量(遠心力)により妨げられ、トーラス(ドーナツ)状の構造がガスの“ため池”の役割を担うと考えられています。 このガスの落下によるブラックホール活動の点火機構は、銀河の進化過程において頻繁に起こる現象である銀河衝突だと考えられているが、活動性を終了させる機構にはいまだ定説がありません。 一方で、大質量ブラックホールが明るく輝いている期間は、宇宙年齢138億年のうちわずか1億年程度と非常に短いことが知られています。 つまり、多くの銀河中心ブラックホールはガス欠でエネルギー源の枯渇状態にあり、我々が住む天の川銀河やアンドロメダ銀河の中心大質量ブラックホールも例外ではありません。いわば冬眠状態にあるブラックホールなのです。 また、急激に活動性が停止した痕跡を示す銀河も近年多数見つかってきており、活動停止機構の特定が待たれています。
Miki, Mori & Kawaguchi, Nature Astronomy, 5, 478 (2021)参照
我々は、アンドロメダ銀河が、中心ブラックホール活動を停止できるかどうかを調べる事で、銀河衝突とブラックホールの活動性との関係を検証する最適な実験場であると考えました。 銀河衝突によって中心ブラックホールへのガス供給源を取り去ってしまうことができれば、やがて中心ブラックホールはガス欠状態に陥り活動停止に追い込まれるため、銀河衝突がブラックホール活動の停止機構としても働くという仮説を立てました。 そして東京大学情報基盤センターと筑波大学計算科学研究センターで共同運用されているスーパーコンピュータを用いた3次元数値流体シミュレーションや1次元解析的モデルを駆使し、この仮説を検証することに成功しました。 図は、衝突した衛星銀河ガスの柱密度がブラックホール周辺のトーラス状ガスの柱密度よりも高い場合には、衛星銀河ガスから運動量が与えられることによって、ほぼ全てのガスが剥ぎ取られることを示しています。 このシミュレーション結果により、銀河の中心衝突が銀河中心ブラックホールの活動性を抑制しうるという物理過程を世界で初めて提案するに至りました。
さらに、この銀河衝突による一連の流体力学過程について、アンドロメダ銀河以外の他の銀河中心ブラックホール活動の停止機構への拡張可能性を検証しました。その結果、多くの銀河中心ブラックホール周辺のトーラス状ガスの柱密度は銀河衝突によって剥ぎ取り可能な範囲であることが分かりました。 このことは、つまり銀河衝突によって多くの銀河中心ブラックホール活動の停止が可能であることを示したことになります。 加えて、銀河衝突による銀河中心ブラックホール活動の停止頻度を見積もるために、最新の位置天文観測衛星Gaiaの世界最高精度の観測データに基づく衛星銀河の精密軌道計算を実施し、銀河の中心領域に強い影響を与えられる銀河衝突の頻度が1億年に1回程度であったと推定されることを示しました。 この結果は大質量ブラックホールが明るく輝いている期間は1億年程度であるという事実とよく符合しており、銀河衝突と大質量ブラックホール活動の関係性の完全解明に向けての大きな一歩となりました。