研究計画

過去の超並列計算機プロジェクトでは、多くの場合、入出力系用の専用ハード ウェア・ソフトウェアが導入・開発されたが、現在では、汎用のバス及びネッ トワーク技術は、これらの研究で目標とされた水準に十分達している。特に、 100 Mbit/秒程度の通信性能を持つ100baseイーサネットやATMは、汎用性と簡 便さからパーソナルユースのレベルにまで普及し、性能価格比で上記ネットワー ク技術を大きく上回っている。またイーサネットのGigabit化が実用化されて おり、そのコストも急激に低下しつつある。従って、今後の超並列計算機用入 出力系としては、汎用製品(commodity)をハードウェア面で積極的に利用し、 ソフトウェア的手法でその利用率を高める方向が開発期間・コストに対する効 率の点で有利であると考えられる。

分散メモリ型超並列計算機であるCP-PACSには、入出力処理のための 専用プロセッサが多数用意されており、大容量の内蔵ディスクに加え、 多数の外部入出力チャネルをサポートすることが可能である。 従って、100baseイーサネット等のcommodity技術を、多数の並列入出力 プロセッサに適用することにより、全体として十分な通信性能を持ち、 性能価格比に優れた並列入出力チャネルを提供することが可能である と考えられる。

また、外部環境として存在する他の計算機資源においても、その計算機性能に 応じた並列なネットワーク環境が提供されつつある。ワークステーションクラスタ 等では、1プロセッサ当たり1つのネットワークインタフェースが実装されている のが普通である。 従って、超並列計算機とこれらのシステムを一対一に結合する際に、並列ネッ トワークを用いて多数のデータ流の同時転送を行うことが可能である。さらに、 ネットワークと同様に低価格化が進んでいる高速スイッチを介することにより、 複数の計算資源間を並列接続して、高性能かつ柔軟なネット ワークシステムを提供することが可能である。

これらの要素をユーザ・アプリケーションから利用する際に、並列チャ ネルの存在を意識しつつ通信負荷の分散を行うことは、ユーザ・プログラムを繁 雑化し、またシステム構成の変更等に対する適用性を損ねる恐れがある。 従って、本システムを実用化するためには、並列チャネル数の増減や、 同時実行中の他のユーザ・アプリケーションとの負荷バランス、あるいは接続先の 相手計算機のチャネル数などの、データ転送負荷の制御に直接関係する システム情報をアプリケーション側から隠蔽し、常に最適な状態で 入出力チャネルの選択・バッファリング・制御を行うよう、システムを 自動化することが必要となる。

可視化システムについては、現在の画像処理専用ワークステーション等を 用いれば、最終的なフレームバッファの描画等の点では専用ハードウェアにより 十分な高速化が達成されている。しかし、素データに対する画像処理においては、 プロセッサ速度の限界等により、より一層の高速化が望まれている。並列入出力 システムに統合された可視化環境においては、素データは並列データ流として可 視化システムに流入する。よって、この段階でデータに対する空間分割的手法に よって、画像処理そのものをできる限り並列化することにより、実時間処理に対 応できるスループットを実現することが可能と考えられる。これらを前提に、可 視化システムを並列入出力システムの一部として実装し、並列プロセッサを持つ 専用ワークステーションにより、データ入力・素データに対するデータ処理をで きる限り並列化し、スループットの向上を目指す。

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