研究プロジェクト

原始銀河団領域における銀河進化の多様性の起源

本プロジェクトでは,宇宙大規模構造における銀河進化メカニズムの解明を目指しています。近年の大規模な観測によって,遙か遠方の銀河が数多く観測されるようになりました。それにより,初期宇宙において銀河が密集している原始銀河団領域が相次いで発見されるとともに,超巨大ブラックホールを持つ銀河,塵に覆われた爆発的星形成銀河,紫外線で大きな広がりを持つ銀河など多種多様な銀河進化の様子が報告されています。しかしながら,これら多様な銀河の進化メカニズムは未だ分かっていません。そして,原始銀河団領域のような銀河の密集地で銀河進化がどのような影響を受けるのかも未解明のままです。

これらの問題を解決するために,我々は大規模な数値シミュレーションによって銀河進化メカニズムを研究しています。コールドダークマターモデルに基づく現在の標準的な構造形成論によると,質量の小さい銀河が最初に作られ,それらが合体していくことで大きな銀河へと進化していきます。その進化過程では,ダークマターの構造の変化,バリオンガスの加熱や冷却,星形成,大質量星からの紫外線や超新星爆発の影響など複雑な物理過程が伴います。したがって,銀河進化を理解するためにはダークマターのダイナミクス,輻射冷却を伴うバリオンガスの流体力学過程の計算が必要になります。また,複雑なガス,星,塵の構造に伴って銀河がどのように観測されるかは,輻射輸送計算が必要になります。我々はすばる望遠鏡,アルマ望遠鏡,スピッツァー望遠鏡などあらゆる望遠鏡の観測に対応可能な輻射輸送計算コードを開発しています(Yajima et al. 2012)。これらの計算を駆使することで,初期宇宙の銀河は超新星爆発の影響によって星形成史,ガスの分布が短時間で大きく変化すること(Yajima et al. 2017),それに伴って紫外線や赤外線光度も変化することを明らかにしました(Arata, Yajima et al. 2019)。現在は計算をさらに拡張し,原始銀河団領域などの環境効果を考慮した上で銀河進化メカニズムを研究しています。

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図 1  宇宙論的流体計算による初期宇宙の銀河の形成シミュレーション。上のパネルは左から順にガス,星,ダストの表面密度。下のパネルは輻射輸送計算によって得られた結果。左から順にダストの温度構造,紫外線,赤外線の表面輝度分布です (Arata, Yajima et al. 2019)。



参考文献・リンク

  1. H. Yajima, Y. Li, Q. Zhu, T. Abel, 2012, MNRAS, 424, 884
  2. H. Yajima, K. Nagamine, Q. Zhu, K. Sadegh, C. Dalla Vecchia, 2017, ApJ, 846, 30
  3. S. Arata, H. Yajima, K. Nagamine, Y. Li, S. Khochfar, 2019, MNRAS, 488, 2629