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矢島 秀伸 氏(筑波大学 宇宙理論研究室)

「原始銀河の初期進化段階における光学的性質」

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宇宙は晴れ上がりにおいて一旦中性化するが、その後初期天体からの紫外線により 再び電離状態へと遷移する。しかしいつどのように宇宙が電離したかを示す宇宙再電離史は 現在でも分かっておらず未解決な問題として残されている。これを明らかにする大きな手がかりとして 銀河における電離光子の脱出確率を知る必要がある。これは銀河内の星から放射される 電離光子の内、銀河間空間へ脱出する割合であるが、現在のところ理論的にも観測的にも 典型的な値は分かっていない。そこで我々はMori&Umemura(2006)における超高精度な銀河進化の シミュレーション結果に対して、詳細な3次元輻射輸送計算を行うことによりこの脱出確率を見積もった。 結果として、活発な星形成を行っている銀河に対して脱出確率は、15%-45%とこれまでの 理論的な先行研究(~3%)に比べ非常に高い値であることを示した。 本講演ではこれらの値と観測との関係、また紫外線背景輻射場への寄与について議論する。 また、現在z>2の高赤方偏移においてはLAE,LBG,SMG,DRG,EROなどさまざまなスペクトルの 特徴をもつ銀河が観測されておりこれらは『銀河動物園』と呼ばれている。しかしこれらの さまざまな銀河がどのような進化や状況において形成されるのか現在まったく分かっていない。 我々はその足がかりとしてMori&Umemura(2006)の結果に対して、星からの輻射と 星間ガスからの輻射を同時に解き、銀河内のダストから放射される赤外線量を見積もった。 本講演ではこれら赤外線と重元素汚染の関係、そしてその空間分布について紹介する。

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