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渡部 靖之 氏(筑波大学 宇宙理論研究室)

「狭輝線を用いた活動銀河中心核の理解」

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銀河の大きさの数万分の1以内の領域が非常に明るいものを、 活動銀河中心核という。例えば、活動銀河中心核の種類の1つである クェーサーは、銀河全体の星の明るさに対し、中心領域のみで100 倍程度も明るく輝いている。この膨大な輻射エネルギー源として、 超大質量ブラックホールと、それを取り巻く降着円盤が考えられている。

活動銀河中心核の特徴の1つは、スペクトルに幅の広い輝線(速度半値幅: 数1000km/s)や狭い輝線(数100km/s、以後狭輝線と呼ぶ)が 見られることである。近年の観測により、狭輝線源は銀河中心から 数10pc〜数kpc にも及び、空間分布はしばしば円錐状であることが分かってきた。 狭輝線を放射するメカニズムとしては、例えばAGNやOB型星からの輻射による 光電離や、衝撃波による加熱が考えられているが、はっきりしたことは 分かっていない。一方、狭輝線の輝線強度比(例えば [OIII]5007/Hbeta : [NII]6584/Halpha)を用いると、様々な天体を分類できることが分かってきたが、 理論的な理解はいまだ不十分である。

そこで本講演では、輻射場中における、heated, ionized gas の物理状態 (電離状態、密度、温度やスペクトル)を計算できる汎用コード Cloudy (Gary J. ferland 1978~) を利用することで、狭輝線を用いた活動銀河中心核 の理論的理解を目指す。

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