松田有一(京都大)
「SSA22 Lya blob1の高分解能サブミリ波観測」
高赤方偏移に見つかってきた数十kpcを超える巨大な電離水素ガス天体 (Lya blob)はおそらく形成期の大質量銀河であり、ダークマターハロー中 におけるガスの冷却収縮、光電離、銀河風といった、銀河形成期における 重要な現象を観測できる天体と考えられている。SSA22 z=3.1原始銀河団中 で発見されたLya blob1は、これまでのJCMT SCUBAによる観測から、 サブミリ波連続光で非常に明るい(17mJy@850micron)ことが知られており、 星形成率が1000太陽質量を超える爆発的な星形成を行っていることが 示唆されている。Mori & Umemura(2006)による、将来楕円銀河へと成長する 銀河形成数値シミュレーションでは、ひとつのダークマターハロー中で 数十kpcにひろがって分布する複数のガスの塊における期を一にした 爆発的な星形成で引き起こされた大規模な銀河風により、Lya blob1の形態 (ひろがりや泡状構造)を再現することに成功している。しかし、これまでの サブミリ波観測の空間分解能は15"(100kpc@z=3.1)であり、Lya blob1のどこで どのような星形成が起きているのかは良く分からなかった。そこで、JCMT SCUBA と比べて一桁高い空間分解能(beam size~2")を持つサブミリメータアレイ(SMA) を用いて、Lya blob1に対する深いサブミリ波観測(rms=1.4mJy/beam)を行った。 しかし、3sigma(4.2mJy/beam)以上のサブミリ波源はひとつも受からなかった。 今回とこれまでの観測結果を合わせると、Lya blob1における星形成は、 一般的な高赤方偏移サブミリ波銀河のサイズ(2-10kpc)をはるかに超えて、 少なくとも40kpc以上にひろがった領域において一斉に起きているのでは ないかと考えられる。


中村有希(東北大理)
「SSA22 z=3.1 Lyα吸収天体の大規模構造」
2005年度インテンシブプログラムによる SSA22 7視野(200Mpc×80Mpc;共動距離) に対する狭帯域フィルターサーベイ(NB497;CW4977Å/BW77Å,z=3.06〜3.12のLyα 波長に対応)で検出したz=3.1 Lyα吸収線天体(LAA)について、LAE(Lyα emitter) 分布との相似等を2体相関などを用いて議論、一般領域(SXDF)のLAA数密度との比較を 行う。又、LAAの解釈について若干の考察を行なう。


林野友紀(東北大理)
「SSA22 z=3 Huge Over-Density RegionとMillenium simulation」
今年8月、SSA22新視野(Sb2)に対しすばる主焦点NB497拡張観測を行なった。(PI=山田亨氏) 新視野はこれまでの視野(Sb1)の右上(北西)に位置し、Sb1に見い出した大規模構造を追跡する第一歩の観測である。初期解析の結果、Sb1の北西端に逹していたベルト状大規模構造(emitter高密度領域)は、新視野において更に北東に述びており、全長120Mpcに逹することが判明した。更に新視野の北東端に、Steidel等が1999年に発見した巨大LyA blobに匹敵する新blob(newLAB)を発見した。Sb1+Sb2(約90Mpc×90Mpc)でのemitter(600個)2次元分布の性質について、角度2体相関解析などによって議論する。更に、Kauffmann CDM構造形成シミュレーションによるカタログ(銀河及びDM halo)と比較し、SSA22 z=3.1大規模構造の特質を議論する。


山内良亮(東北大理)
「SSA22天域におけるz=3.1 Lyα Emitters (LAEs) 大規模構造サーベイとクラスタリングの特性」
本講演では,2005年度 SUBARU intensive program (S05A-008) において我々が行なった z=3.1 Lyα galaxies 大規模構造探査 ---主焦点カメラ "Suprime-Cam"/Narrowband 広域ディープサーベイ によって検出した SSA22 z=3.09±0.03 の Lyα Emitters (LAEs) 大規模分布と クラスタリング特性について議論する。 我々はこれまでにも SUBARU normal program において Narrowbandディープサーベイを行ない, SSA22 z=3.1 大規模構造の LAE 数密度超過に注目してきた (Hayashino et al., AJ2004: 主焦点1視野--Sb1; Yamauchi et al. 2006, submitted to AJ: 同2視野--Sb1+Sb2)。 即ち,Sb1+Sb2 に見い出した体積 1.5×10^{5} [Mpc^{3}] の LAE 大規模構造は, CDM simulation (GIF: Kauffmann et al. 1998) による ダークマターハローの空間分布との比較(count-in-cells等)により, およそ6σの事象であることを明らかにした。 これは,宇宙の地平線内での期待値が0.01個であることを意味する。 しかしながらこの時点の解析では,SSA22 に対する対照領域(一般領域)の統計が 不十分で,LAE 数密度の field to field variation なども懸念された。 今回,2005年度 SUBARU intensive programにより,これまでと同様の深さで SSA22 の広域 Narrowband サーベイを行ない, これまでに,SSA22主焦点・計7視野および 一般領域 (SXDF)・同3視野において 深い LAE 検出(NB497<25.8, EW_{obs}>120Å)に成功している。 講演では,約10^{6} [Mpc^{3}] の体積において検出した SSA22 z=3.1 大規模分布について紹介し, 改めて行なったクラスタリング解析および CDM simulation との比較について議論を行なう。


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