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古屋玲 氏(国立天文台ハワイ観測所)

「原始星(ファーストコア)の誕生後、数1000年を捉えた」

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1990年代以降の赤外線天文学と電波天文学の急速な進展によ って、太陽質量程度の若い星における、進化シナリオが観測 に基づいて描かれるようになった。しかしながら、この進化 シナリオが出発点として採用する、分子雲コアの収縮はどの ように始まり、原始星の形成に至るのであろうか、は明らか にされていない。
この疑問に答えるためには、原始星を産む 母体の分子雲コアが分子流による破壊を受けていないような 極めて若い進化段階にある天体を同定する必要がある。この 目的のため、我々は大規模なサーベイを行い、希有な進化段 階にある低質量原始星GF 9-2を初めて同定することに成功し た。この原始星こそが、上述の疑問に答えるための格好の実 験室を提供すると言えよう。そこで、我々はGF 9-2の集中的 な観測を行った。特に、電波干渉計の弱点である、空間的フ ィルター効果を克服するような解析を行い、データの空間的 スケールのダイナミックレンジを0.1 pcから0.001 pcの範囲 に広げたことが、コアの密度及び速度構造の詳細な解析を導 いた。
この結果、GF 9-2は、重力的に不安定な状態から収縮 を始めた、数千年にも満たない極めて若い段階にあることが わかった。即ち、30余年に渡って論争が続いてきた、分子雲 コアの重力収縮に関する2つの進化モデルのうち一方が与え る星形成の初期条件を強く支持することを意味する。
基調論文:Furuya et al. 2006 ApJ 653, 1369

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