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赤堀 卓也 氏(東京都立大学 宇宙物理理論研究室)

「銀河団ガスのコア構造の熱的進化」

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銀河団中にある数千万度の高温ガスはX線を熱制動放射する。密 度の高い中心部での放射冷却時間スケールは数Gyrと銀河団の形 成進化の時間から考えると短く冷却の影響がみられてもよいと考えられ てきたが、ASCAをはじめとするX線衛星の活躍から冷えた ガスの量はゼロないし従来の冷却流モデル(cooling flows)の期 待より極めて少ない。同じ頃、Ota, Mitsudaらは銀河団ガスの空 間密度分布の特徴を表すコア半径について統計を取ったところ、 2つのピーク分布を示すことを発見した。これは従来の断熱・相似的な 銀河団形成モデルでは説明できない新展開である。

講演者はいくつかの観測的な示唆から、2つのピーク分布が銀河 団ガスの放射冷却による熱的進化の兆候である可能性を指摘し、実際流 体シミュレーションによって放射冷却で2つのピーク分布は作り うることを明らかにした。そしてこの結果から、多くの銀河団は今のと ころ緩やかな冷却局面にあるのではないかという示唆を与えた。

本講演ではこれまでにわたる銀河団ガスのコア構造に関する研究の紹介 をすると共に、関連する銀河団形成の大規模数値実験の変遷と、 SPHコードを用いた数値流体実験の方法についても紹介する。

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