English Version

活 動 銀 河 中 心 核
Active Galactic Nuclei (AGNs)

TOPICS
活動銀河核の「輻射性なだれ」
巨大ブラックホール形成
マイクロレンズによるクェーサー構造の探究
活動銀河核における自己重力粘性円盤
活動銀河核の時間変動

活動銀河核の「輻射性なだれ」

ここ数年,HSTを含む観測の目覚ましい進展により,銀河内の活発な星形成過程と クェーサー/AGN現象に何らかの強い関連があるという証拠が急増してきた。昨今の HST観測では, 近傍のかなりのクェーサーが明るい母銀河の中心にあることが示され た。また, セイファート銀河の中心領域には, 爆発的星形成領域が多く見つかって きている。さらに最近, 遠方のクェーサーに見つかった大量の分子ガスとダストは, 母銀河である原始銀河がかなり短い時間で爆発的星形成を行い,これが何らかの形で クェーサー活動性と結び付いていることを示唆している。
我々は, クェーサー/AGNと爆発的星形成の強い繋がりを説明する物理的メカニズム として、星形成領域からの強力な輻射場による輻射摩擦によって, 中心核を取り囲 む回転ガス円盤から角運動量が効率よく抜き取られ, さながら「なだれ」的に中心 に落ち込むという「輻射性なだれ」モデルを提唱した。この「輻射性なだれ」は, 数pc-100pcの領域では, 通常のα粘性による降着よりも速い。また,銀河中心のバー 不安定による質量降着は, 数10pc程度までが限界であることがわかってきており, 「輻射性なだれ」は, バー不安定が効く数10pcまでと, α粘性が効く1pc以下の間を 繋ぐ第3の質量降着メカニズムと見ることができる。


輻射性なだれのイメージ図

References

巨大ブラックホール形成

大質量ブラックホール形成を調べるために、宇宙晴れ上がり直後の密度ゆらぎの 非線形成長を3次元流体計算コードを用いてシミュレートした。この計算では、宇 宙論的降着円盤の形成と分裂、そしてコンプトン粘性による角運動量輸送を計算し なければならないため、3次元流体粒子法を用いた。この力学系では,熱制動放射、 共鳴線遷移、コンプトン散乱、輻射性再結合などのバリオンガスの熱力学的効果だけ でなく,ダークマターやガスの自己重力が重要な役割をする。また、電離過程の時間 発展も、進化に大きな影響を与えるため、これらの物理過程を採り入れた計算を行な った。宇宙モデルはバリオンのみの場合とバリオンとダークマターが共存する場合の 両方を調べた。この計算によって明らかにされた大質量ブラックホール形成のシナリオ は以下のようなものである。まず、宇宙初期の密度ゆらぎは、重力不安定性によって 高密度ガス雲に成長する。このとき、ゆらぎは角運動量を獲得するため、1点に凝縮 することはなく、回転降着円盤ができる。この降着円盤の内部では、局所的重力不安定 が起こるため、そこで第1世代の星が誕生する。ガス円盤の約10%が星に転換される と、残りのガスは星からの紫外線によって完全電離状態となる。すると、この電離プラ ズマと宇宙背景放射の間のコンプトン摩擦が急激に強くなり、プラズマから宇宙背景 放射へ角運動量の輸送が起こる。その結果、降着円盤は急速に凝縮していき、非常に コンパクトな系が出来上がることになる。このコンパクトなガスコアは一般相対論的 に不安定となり、宇宙年齢の10万分の1程度の時間で大質量ブラックホールへと進化 することが示された。


巨大ブラックホール形成のシミュレーション

References

マイクロレンズによるクェーサー構造の探究

活動銀河核における自己重力粘性円盤

活動銀河核の時間変動