『Global Radiation-Magnetohydrodynamic Simulations of Black Hole Accretion Flow and Outflow:
Unified Model of Three States 』
大須賀健(国立天文台)、嶺重慎(京都大学)、森正夫(筑波大学)、加藤成晃(JAXA)
概要
ブラックホールへのガス降着流の理解は、 1970年代に登場した標準円盤モデルと、それに引き続き提案されたスリム円盤モデル、
ADAF(RIAF)モデルといった1次元モデルを中心に大きく発展してきた。これらのモデルでは、肝心のエネルギーおよび粘性の起源
を現象論的モデル(所謂αモデル)で扱っている。近年、それらが磁場起源であることがわかり、 MHD計算で詳細な研究が行われ
るようになった。しかしながら、より現時的な描像を得るためには、輻射冷却や輻射圧も考慮する必要がある。即ち、MHD計算に
輻射輸送を取り入れた輻射磁気流体(RMHD)計算を行わなければならない。
降着円盤は、質量降着率に応じて大きく三つの状態に分かれることが知られている(質量降着率の大きい順にスリム円盤、標準円
盤、RIAFと呼ばれる)。円盤密度が異なり輻射冷却、輻射圧の効き方が変わるのが主な理由である。我々は、この三つの状態を一
つの計算コードで再現し、超臨界状態(スリム円盤に対応)では輻射圧加速により、それ以外の状態では磁気圧加速によってガス
が噴出することを示した。
質量降着率が臨界値以上の場合、輻射圧優勢で分厚い円盤が形成され、輻射圧加速型のアウトフローが発生することがわかった
(Model A)。質量降着率が臨界値の1%程度のときには輻射冷却の効いた薄い円盤(Model B)が、 0.01%程度の場合は輻射冷却が効
かず、高温プラズマから成る分厚い円盤(Model C)が形成されることがわかった。 Model BとCの円盤からは、磁気圧で加速され
たアウトフローが発生する。磁場のエネルギーはガスのエネルギーの2倍(Model A)、 30%(Model B)、20%(Model C)まで増幅され
る。また、粘性トルクがおよそ圧力に比例することがわかった。
さらに本論文では、輻射磁気流体シミュレーションで得られた降着・噴出流の構造とダイナミクスをより詳細に解析した結果を
報告している。超臨界状態の円盤では円盤内部でガスが回転運動していることがわかった。また、ブラックホール近傍(およそ
4倍のSchwarzschild半径)で super-magnetosonicになっている。これは内向きの輻射圧でガスが加速されているためと予想さ
れる。円盤内部の回転運動は、質量降着率の極めて小さい状況(RIAFに対応)でも発生している。さらに、降着・噴出流の密度
構造、温度構造、粘性トルクの動径分布などについても報告した。
本論文は、日本天文学会の欧文研究報告に掲載される。プレプリント...
|