つくば宇宙理論セミナー

第25

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① ブラックホール時空におけるチャーン・サイモン重力場と電磁場の効果 ② 時空回転が誘起するランダウ量子化

高橋 労太 氏

苫小牧高専


要旨

① 銀河中心ブラックホール観測のサイエンスの目標の一つに重力理論の検証がある。また,近年の観測により,光源の空間位置情報を含んだ電波ビジビリティのデータが実際に得られはじめており,近い将来の電波干渉計観測によりブラックホールが周囲にある磁気輻射プラズマを吸い込む様子が写真として撮られるのだろう。このような観測はブラックホール時空及び周囲のプラズマに関する新たな研究手段を与えることになる。重力理論の検証を考える場合,一般相対論で予言されているカー時空をより広い枠組みである摂動カー時空におきかえて理論を構築する試みがなされている。その中に一般相対論からのずれを予言する重力理論も含まれる。一般相対論以外の有力な重力理論としてチャーン・サイモン重力を含む量子重力理論がある。今回は,この重力理論で予言されるブラックホール解を用いて降着シミュレーションを行い,その結果を元に一般相対論的光子輻射輸送計算を行うことで電磁波での観測イメージを計算した。今回の計算は実際に電波干渉計で得られる観測量まで理論計算しているので,近い将来の干渉計データを用いた重力理論の検証の準備計算を行ったことになる。計算の結果,チャーン・サイモン重力でのブラックホール・イメージは一般相対論のものとは異なり,この違いは将来の電波干渉計でとらえられる程度になるパラメータもあることがわかった。また,Kerr時空からの摂動を記述するTeukolsky方程式を解く事により,チャーン・サイモン・ブラックホール時空中での電磁場の定常解も得られたので合わせて報告する。

② 一方,曲がった時空中の電磁場の中にある電子のシュレーディンガー方程式を解く事によりランダウ準位の解析解を得た。今まで,重力の効果,非慣性系の効果,電磁場の効果および量子効果を全て含んだ電子のエネルギー準位の解析解は知られていなかったが,今回得られた解はこれらの効果を全て含んだ初めての電子のエネルギー準位の解析解である。この解によると,通常のランダウ量子化の加えて,時空が回転している場合には新たなエネルギー準位が現れる。また,この準位は電磁場がない場合にも残る順位であり,時空回転に固有のエネルギー準位であることがわかった。また,ランダウ準位の観測ではその準位の起源が電子なのか陽子なのかが問題になる場合がある事が知られているが,時空回転が引き起こすランダウ準位では電子と陽子の縮退は存在しない。 つまり,準位を見れば電子か陽子かが判断できる。

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