つくば宇宙理論セミナー

第9

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ライマンアルファ銀河の観測で探る銀河進化と宇宙再電離時代

太田 一陽 氏

理化学研究所


要旨

我々は,すばる望遠鏡・主焦点カメラと狭帯域フィルター(波長約0.975ミクロン)を用いて赤方偏移z=7のライマンアルファ輝線銀河(Lyman Alpha Emitter=LAE)の広視野探査を行い,z=6.96LAEの検出と分光同定に成功した。この銀河は最近z=8.3ガンマ線バースト(GRB)が発見されるまで約3年間最遠方天体の記録を保持した。しかし,主焦点カメラのCCD感度は波長0.9-1ミクロンでは低く,z=7 LAE1個の発見がやっとだった。 z>7銀河の探査能力を高める為,主焦点カメラCCDは最近,1ミクロン付近に対し前より2倍の感度がある完全空乏型CCDにアップグレードされた。我々はその利点を活かし,早速z=7 LAEの更に深い広視野撮像サーベイを行った。その結果,少なくとも3個の有力なz=7 LAE候補と可能性は少し低くなるが更に4個のLAE候補を検出した。LAEのライマンアルファ輝線光子は宇宙再電離時代に存在したまだ電離されていない中性水素によって吸収・散乱されるため,中性水素が存在すれば観測されるLAEの個数密度が減少すると考えられている。本サーベイでは,z<に比べz=7でLAEの個数密度が有意に減少しており,z=7では宇宙の再電離がまだ完了していない可能性があることを確認した。クエーサーやGRBの観測などで,再電離が終わったのはz~6頃だと示唆されているが,我々の結果はそれを支持する。 また,現在唯一分光同定されている最遠銀河z=6.96 LAEの恒星質量,年齢,ダスト等の性質をSpitzer宇宙望遠鏡等の赤外線撮像データを用いて調べた。その結果,制限は緩いが,この銀河は,恒星質量<0.9-1.8×109 Msun,年齢<260Myr,E(B-V)<0.6の性質をもつ事が分かった。 今後は,z=7LAE候補の分光観測,COSMOSプロジェクトとの共同研究などを予定している。 セミナーでは,本研究分野の背景と結果及び今後の展開について講演する。

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