つくば宇宙理論セミナー

第6

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恒星系との相互作用によるSMBH連星の進化

岩澤 全規 氏

国立天文台・理論研究部


要旨

多くの銀河中心領域には106-109太陽質量の大質量ブラックホール(SMBH)が存在する。この様なSMBHを持つ銀河同士の衝突合体によって,合体銀河の中心にはSMBH連星が出来ると考えられている。この連星は星と相互作用をする事によって,連星間の距離を縮めて行くがやがて相互作用できる星がなくなり(loss cone depletion)連星の進化が非常に遅くなる。星同士の相互作用による2体緩和の効果で星は供給されるが,このタイムスケールを見積もるとハッブルタイムより長くなってしまいSMBH連星は合体出来ない(final parsec problem)。N体シミュレーションの結果からも,連星の進化が減速する事が確認された。このため,仮にSMBH 連星を持つ銀河とSMBHを持つ別の銀河が合体すると,銀河の中心にはSMBHの3体系が出来る事になる。本研究では銀河中にSMBHが3体有る場合のN体シミュレーションを行い,SMBHの3体系がどの様に進化するかを調べた。その結果,SMBH3体系では3体のうち2体が多くの場合に合体する事が分かった。 又,近年,質量が異なるSMBH連星の離心率は非常に高くなり,連星の重力波放出による合体時間が短くなる事が分かってきた。しかし,何故,離心率の成長が起こるのかは分かっていなかった。本研究では,N体シミュレーションを用いて連星回りの星の軌道を調べた。結果,SMBH連星の摂動により,星の角運動量がランダムになる事と順行軌道の星が選択的にエスケープされる事の二つの過程の組み合わせで離心率が上がる事が分かった。

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