Kazuya Saigo's Master' Thesis Abstract page
修士論文 Abstract '96 1.19
動的に収縮する原始星円盤の構造と進化
形成途中にある多くの天体は、中心の星とそれを取り巻くガス円盤を持つことが
観測により知られている。本論文では、円盤をもつ星の形成を記述する理論を、
半解析的な方法で構築する。
円盤をもつ星の形成過程は、大きく2つの段階に分けられる。前半は、
Runaway Collapse期と呼ばれる、自己重力によるガス収縮の段階である。
回転や磁場があると、自己重力によって収縮するガスは偏平な円盤になる。
収縮が進むに連れて、中心面密度は上昇し、面密度がほぼ一定の中心領域
は縮む。中心から離れたところでは、面密度は半径に逆比例する。
Runaway Collapse期の最後には、中心部でも、面密度が半径に
逆比例し落下速度が一定になる。
後半は、Inside-out Collapse期と呼ばれる、中心星とガス円盤
への質量降着の段階である。Inside-out Collapse期では、時間に比例
して質量が増加する星が中心に形成される。
円盤のガスは、内側から順に中心星に自由落下してゆく。
Inside-outという名前は、ガス円盤からの降着の様子から付けられた。
Runaway Collapse期でも、Inside-out Collapse期でも円盤の面密度分布などは、
その関数形を変えずスケールのみが時間進化する。
この性質を利用すると、円盤の進化を相似解で表すことができる。
私は、Runaway Collapse期とInside-out Collapse期のそれぞれに
対して相似解を数値的に求めた。
相似解を求める際には、(1) ガス円盤は等温に保たれている、
(2) ガス円盤は幾何学的に薄い、という仮定をおいた。
今回得られた相似解から導かれるおもな結果は、以下のとおりである。
(i) 相似解には、回転速度の異なる無数の解が存在する。回転の強さは無次元の
パラメータωで表現できる。Runaway Collapse期について、いろいろな回転に
ついての円盤の解を数値的に厳密に得た。
(ii) Runaway Collapse期の解について、確認のために数値シミュレーションと比べた。
磁場に貫かれたガスの場合、実効的に音速と重力定数を変換することで表せて、最大
30%の誤差でそれと一致した。回転しながら重力収縮するガスの場合、落下速度の誤差
は 10%、面密度分布は 70% であった。誤差はおもに、Thin Disk近似が重力を強く見積
る傾向があるためである。
(iii) Inside-out Collapse期の近似解から、中心星の質量降着率を計算した。質量降着率
は、ωが大きい(回転が速い)ほど、小さい。