つくば宇宙フォーラム

第61

微惑星形成と原始惑星系円盤の乱流

奥住 聡 氏

東京工業大学


要旨

微惑星の形成は惑星形成における最大の謎の1つである。 微惑星とはキロメートル超級の固体天体であり,原始惑星系円盤に含まれる固体微粒子(ダスト)から何らかの過程を経て形成されるものと考えられている。 これまでに提案されてきた微惑星形成のシナリオは,(1)ダストの付着合体,(2)ダストの濃集を経由した自己重力収縮,あるいはそれらを組み合わせたものに大別できる。 これらのシナリオのどれが最も現実的かを明らかにするためには,ダストのメカニクス(ダスト集合体の衝突破壊強度)およびダイナミクス(円盤内での運動)という2つの素過程をどちらも十分に理解することが必要である。

本発表では,これらの素過程と原始惑星系円盤の乱流との関わりについて議論する。 円盤ガスの乱流はダストの衝突速度を増幅するため,それらの衝突の結果(合体/破壊)を大きく左右する。 また,乱流はダストの円盤内での拡散や濃集も引き起こすため,自己重力収縮による微惑星形成の可能性に対しても大きな影響を与える。 本発表では,磁気回転不安定(MRI)によって生成される磁気乱流を主な具体例にとり,微惑星形成の可能な経路がいかに乱流強度に依存するのかを,発表者のこれまでの研究も交えて紹介していく。