つくば宇宙フォーラム

第37

アンモニア分子輝線で探る分子雲の物理状態

瀬田 益道 氏

筑波大学 宇宙観測研究室


要旨

分子雲は主に水素分子から成るが,通常の低温(〜10K)な分子雲では,水素分子を直接観測できない。 そこで,分子雲は水素分子に次いで多い,COを用いて観測されてきた。 天の川や近傍の系外銀河における,分子雲の量や分布は 明らかにされたが,その物理状態(密度や温度)を求めのは容易ではない。 CO J=1-0輝線は光学的に厚く分子雲内部を見通すことは難しい。 分子雲の物理状態の解明には,高い励起状態のCO輝線や,高密度領域の観測に適した分子の輝線(例CS)を用いて,その輝線強度比から,物理状態を導出している。 ところが,これらの輝線は,周波数が大きく異なるため,異なる望遠鏡を用いた複数回の観測が強いられ,指向誤差や強度較正の精度,ビームサイズの違い等の観測に起因した不定性が大きくなる。 アンモニア分子は,23GHz付近の狭い周波数帯域内に回転反転遷移による複数の輝線が存在する。 単一望遠鏡による一回の観測で複数の輝線の同時取得が可能である。 筑波大学では,国土地理院32m鏡に,アンモニア分子輝線の(J,K)=(1,1)〜(6,6)まで同時に観測可能な20GHz帯受信機システムを搭載した。 今回は,32m鏡の20GHz帯の観測システムの現状及び,系外銀河のアンモニア分子輝線探査の結果を紹介する。